高橋由一展

東京藝術大学美術館の高橋由一展に行って来たのですが、地味かと思いきやかなり良かったです。もちろん鮭も花魁もありますよ。豆腐はなかったけど。

個人的に面白かったのが、由一が写真と洋画を比較して記録という意味で洋画の方が勝るとしている点です。もちろん西洋においても写真が出てきた19世紀中盤には、それまで記録としての絵画やカメラ・オブスクラに変わる立場としての写真という議論があったわけですが、由一が洋画以前に博物画を描いていたことから、記録としての表現形態として洋画に着目している点は面白いです。

由一って花魁とか豆腐とかいかにも洋画初期という感じのちょっと下手にも見える感じが味があって人気があったりしますが、実際他の作品見ると無茶苦茶うまいです。正直洋画を日本で初めて本格的にやって、たかだか数年でよくもここまで描けるものだというレベル。

個人的に好きなのは風景画ですね。今から見ると普通といえば普通なんですけど、構図が近景と遠景をうまく生かして、今までの日本画では表現できなかった三次元の表現を確立している。リアリティの上で既に日本画的な省略もきちんと取り入れてダイナミックな構図になっていて、船の絵とかすごくいい。

むしろこの人が最初にハードル上げすぎて、後続の画家は単純に新しい表現を楽しむみたいなことが出来なかった気がします。時代的に西洋では既に印象派とかが出てきていてリアリティってなんぞやという話になり、日本は日本で最初の興奮が冷めると、西洋画で何を描くかみたいな悩みを抱かざるを得ない。

こういう悩み以前のなんというかビュアな新しい表現形式を手に入れた喜びのようなものがあるのがいいです。