奈良美智とラッセン

「ラッセンとは何だったのか?」について書こうと思ってたら、奈良美智さんが興味深い発言をしたらしい。
http://togetter.com/li/569712

奈良さんの作品について自分の考えを言えば、正直いまだにこの人をどう位置づけていいのかよくわからない。その理由は「かわいさ」という感性に対してあまりにもストレートに過ぎるように思われるから。

もちろん単純なかわいさでないことはわかるし、むしろ、ほとんどのアーティストがかわいさを扱う上で「このかわいさはわざとやってるんですよ」という、気持ち悪さとかのわかりやすい記号を付加した上でしか扱えないのに対し、そういうアート的な記号を付加せずにアートを成し遂げたことが、奈良さんの成し遂げた価値であることは理解できる。

ただその一方で「かわいさ」というのは、ラッセンの絵画に感じられる「神秘的」と同レベルのわかりやすい、あえて言うなら「低俗な」感性であることも事実である。

ラッセンの絵の問題は、自分の実際は「低俗な」感性による判断を「アート」という権威で覆うことにより、自分は「アートを理解する高尚な人物」であると錯覚させる部分である。それにより「アート」の権威が棄損される。だからラッセンは嫌いだ。というのであれば、奈良さんの絵の「かわいさ」に惹かれる人々にも似たような面があるのではないだろうか。

もちろん、それは作家の意図したところではないだろう。しかし、奈良さんが日本の現代美術家としては、異例とも言えるほど非常に幅広い人々に人気を博している理由に、そのような面がないとは言えない。その意味で奈良さんとラッセンを「正しいアートと間違ったアート」のように単純に割り切ることはできないだろう。

念のため言っておくと、奈良さんの絵やファンを「低俗だ」と言っているわけではないし、そもそもアートが「高尚」だとも自分は思っていない。その点、気分を悪くする人がいたら申し訳ない。