イメージの力 ― 国立民族学博物館コレクションにさぐる

国立民族学博物館という名前だけ聞くと農機具とか地味なイメージがあるのですが、美術的にもかなり面白いところです。そのエッセンスが国立新美術館にやってきました。

内容としては、この手の展示では筆頭にあげられるアフリカ、オセアニアの仮面はもちろん、神像、墓標、絵、道具など盛りだくさんで、かなりの分量があります。とはいえ国立民族学博物館本体よりはコンパクトで、2時間もあれば十分見られます。

美術館の視点で展示してある部分も面白く、通常この手の展示は地域別なのですが、地域にこだわらない視点の展示になっています。その一方、地域を中心とした視点の解説はありません。

展示の方向性として面白いのが最後の二章で、現代において民族学的事物が、一方ではおみやげ品などの商品として、一方では「美術という制度の構成員」として捉えられる姿に焦点を当てています。

現代という意味では、これらは世界においては完全に過去の遺物というわけではなく、アフリカの一部では呪術の材料のための犯罪等が問題になっていることもあり、単純に牧歌的ノスタルジーで捉えられない部分もあるように思います。

美術好きもそうでない人も楽しめると思うのでオススメです。