ヤン・リーピン 孔雀

舞台芸術としての完成度がものすごい高い。いや凄い作品です。

ヤン・リーピンは名前は知ってたけど観たことなかったです。今回も有名だし一応観ておくか的な感じでチケット取るのが遅く、席も1階最後列と良くなかったのですが、もっと早くチケット取っておけば良かった。

ダンスはもちろん、衣装、美術、音楽、演出の全てが驚きに満ちており、それでいて、難解ではなくきちんとエンターテイメントとして成立している。しかも古い名作の再演ではなく、新作です。こんな条件を満たす作品は、1年に1回観るかどうかといったところ。

特筆すべきはやはり演出じゃないかと思います。珍しいのが一部でリアル系CGの映像を背景に使っていること。ただし全体が動くのではなく、ごく一部が動いて、舞台装置や衣装による演出を補完するといった感じです。

これが映像に頼りすぎると全く興ざめなのですが、舞台装置による演出自体が優れているため、むしろ舞台芸術の幅を広げるように感じました。

あと時の人が実に舞台的でいいですね。録画で観るとアップになるでしょうから彼女の意味がないわけで、舞台が舞台であることをあえて意識したのだと思いました。

音楽は民族音楽による生演奏と録音がありますが、生演奏である部分はきちんと意味がある構成になっています。あと鳥笛のアイデアが凄い。生演奏かどうかの説明が毎回字幕に出るのはちょっとくどい気もしましたが、あったほうが作品に対する理解度は上がると思います。

いわゆるクラシックバレエ的なストーリー主体の舞踊を現代でやると、難解になるか、古くさくなるかどちらかの方向になることが多いように思いますが、それをこれだけの完成度で、なおかつあまり舞踊に興味のない人でもエンターテイメントとして面白いであろう作品にできるというのは素晴らしいし、舞踊というのはもっと可能性があると思いました。