バケモノの子

いやすごい映画だと思う。

あえて斜に構えた言い方をすると、何よりすごいところは、細田守に期待されるポストジブリとしての役割に完全に応えたうえで、独自の作家性もきちんと盛り込んでいる点だと思う。

ポストジブリとは具体的に言うと以下のような点である。

  • 夏休み映画であること
  • 大人が子供に安心して見せられること
  • 大人も子供も楽しめること
  • 若者のデートムービーとしても成立すること
  • 映画オリジナルのコンテンツであること
  • 大人は大人なりの視点で考えさせられる作品であること
  • 作家性が確立されてブランド化できること

ジブリ自身がポスト宮崎駿を育てる試みはあまりうまくいかず、結局ジブリは制作部門を既に閉じてしまった。このポジションは原恵一山崎貴もチャレンジしたが、内容の評価は高くても、今一つの興行成績だったように思う。

その中で「おおかみこどもの雨と雪」は、子供に見せるには若干ためらわれる内容であるにも関わらず、興行収入40億円を達成。細田守がポストジブリの本命と期待される状況だった。

この映画は上記のポストジブリに期待される内容に全て全力で立ち向かって、素晴らしい結果を出している。もちろん異世界描写などは宮崎駿には及ばない部分もある。しかし、宮崎駿にできなくて、細田守にできること。それは、現代の描写であり、現代的な若者や親子の関係である。

中盤までのどことなく千と千尋を思わせるバケモノの世界から、現代の渋谷に物語が戻るとき、それこそが「ポストジブリ」が立ち上がっている瞬間なのだ。

まあ、オタク話はおいておいて、エンターテイメントとして十分すぎるくらい楽しめるので、普通におすすめします。