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MOTアニュアル2016 キセイノセイキ

MOTアニュアルというと全体的に内省的でおとなしいイメージの作品が多いのだが、今回は休館前の最後の展示だからか、かなりアグレッシブだった。

橋本聡はオノヨーコ的な観客命令型の作品だが、美術館における禁止事項自体を作品とするため、指示のかたわらで指示を実行しないように美術館側の注意書きがあり、監視員が見張っているという状況がおかしかった。フェンス登りくらいはやる人がいそうだが、その場合どう対応するのだろうか。

藤井光の想像の祈念館も面白い。展示物が存在せずに、その解説だけで祈念館を構成する試み。このような場所では物があったところで、ほとんどの情報は文章から得てしまうのだから、これで十分なのかもしれない。

圧倒的なのは横田徹の戦場映像だった。アートは現実を抽象化することで見方を変える方法だと思う。しかし、そもそも現実を知らない事象の場合、抽象よりも現実の映像のほうが圧倒的に力があり、考えさせられる。考えさせることが目的であるなら、アートはこの場合劣る手段でしかない。

ただこれは完全にドキュメンタリーであり「アート」として美術館で展示するものなのかという気はしないでもない。「規制」という視点で考えるという文脈で展示されており、映像編集者もそれについてコメントしている。

確かに展示作品は一部の映像について黒塗りで規制がかけられている。ただその一部のためにこの映像の価値が大きく変わるとは思えない。観るか観ないかという問題に比べれば、一部の映像に黒塗りがあるかどうかは非常に些細な問題にすぎず、そのように問題を矮小化すること自体がむしろ問題ではないかという気さえする。

しかし、この映像をどこで公開するかというと手段はかなり限られるだろう。テレビは難しいとすると、ドキュメンタリー映画としての公開だが、かなり観客は限られるだろう。その意味では「アートという文脈で」公開することにはそれなりに意味があるのかもしれない。

ちなみに同時開催はピクサー展であった。大混雑だったので自分は観なかったが、雰囲気のあまりのギャップにくらくらした。