しりあがり寿の現代美術 回・転・展

「現代美術って何?」に対するわかりやすい回答だと思う。

本展はまず「やかんは止まっていればただのやかんだが、回ると芸術になる」と説明される。そしてひたすらいろんなもの、それは既存の商品や創作物や思い出の品がとにかく回っている。よく考えるとこれは芸術というものを非常にうまく表現したメタ芸術だなと感心した。

現代美術はよくわからないと言われる。自分もさっぱり何をしたいのかわからないものがたくさんある。でも、個別に何をしたいかはわからなくても、全体として何をしようとしているかはわかる。それが「回すこと」なのである。

芸術家はやかんに水を入れることも火にかけることもできない。やかんを電気ポットにすることもできない。それは非常に大切なことだが、そういうこことはプロに任せておけばよい。

芸術家はやかんを回してみる。やかんを回すと今まで気が付かなかったことが見える。右斜め45度からみるとカッコいいとか、そもそも完全な円になっていないのではないかとか、大抵はどうでもいいことだ。しかし、時には熱くない取っての持ち方に気が付くかもしれない。そのために回すのだ。

回すものも回すやり方も人それぞれだ。いい回し方も悪い回し方もあるだろうし、人によって見えるものも違うだろう。そもそも回すという行為に実用的な意味はないので、傍目から見たら馬鹿にしか見えないかもしれない。それでも回してみたくなるのが芸術家なのだ。