カリギュラ

Vitaのゲームのカリギュラ解きました。
ゲームとしては良くない点もありますが、挑戦的で自分は好きです。
http://www.cs.furyu.jp/caligula/

世界観

世界設定が独特なので整理します。

  • 多くの人がボーカロイドμの楽曲のファン
  • μが仮想人格を持ってしまう
  • ファンは現実でつらいことを忘れるために、μの楽曲を聞いていた
  • μがファンの現実での苦悩に共感し、仮想世界メビウスを作ってファンを中に入れる
  • メビウスでは現実の年齢とは関係なく全員高校生になる
  • 理由はμがファンの欲望から高校時代こそが「人間の最も輝かしい時期」と考えたため
  • メビウスに入ったファンは現実世界では植物状態になる
  • メビウスで死ぬと現実でも死ぬ
  • メビウスの住人はここが仮想世界だとは知らない
  • 主人公たちはそれに気が付いて現実に戻ろうとする

仮想世界が理想世界というのは珍しくないですが、大きなポイントは「メビウスでは現実の年齢とは関係なく全員高校生になる」という点です。

海外からよく言われる日本の漫画、ゲームの不思議な点として、大人向けのコンテンツであっても、主人公の多くが高校生であることがあります。海外だと大人向けのコンテンツの主人公はたいてい大人です。

これを「だから日本人のオタクは幼稚である」と言うのは簡単ですが、それだけではないのではないかと。たぶん高校が江戸時代とかファンタジー世界と同じ、共通認識可能な世界観になっているからでないかと思います。

その「現実世界の大人が、現実を忘れるための仮想世界においては高校生であり、そのことに疑問を持たない」という点を非常に自覚的に構成したのがこの作品で、この点は非常に面白いと思います。

そして、この点はゲームとしても非常にメリットがあり、見た目としては高校生のわかりやすいビジュアルでありながら、大人の悩みをシナリオに入れることが無理なく可能となる。

実際にゲーム内では高校生だと笑って過ごせるけど、その年齢でそれはつらいとか、高校生だと普通できない大人の設定とかがあって、大人だからこそ心に刺さるシナリオがあります。もちろん現実でも高校生というキャラもいます。

そしてだからこそ、今ゲームをプレイしている我々大人がゲーム内では高校生として現実逃避しながら、ゲームの中では高校生としての仮想世界から、つらい大人の現実世界に戻ることを選択するという問いが重く思えるわけです。

もちろん理想世界ものというのは多くがそういう問いを含みますが、ここまで構造的に完璧にメタ化した点は高く評価されるべきと思います。


悪い点としては、キャラクターシナリオがいい意味で重い分、全員のシナリオを並行してまとめてやるのが精神的につらく、もったいない感じがしました。キャラクターシナリオの上限がメインシナリオの進行度と連動しているからそうなるんでしょうけど。もうちょっと分散して読みたかったですね。

グラフィック・音楽

グラフィック・音楽面についてはとにかくトーンが徹底されています。通常の商業作品であればやりすぎではないかというレベルです。

グラフィックについてはVitaということもあり、オブジェクトの作りこみなどはそれなりです。しかし派手さをあえて抑えて色のテイストを絞り込んだ点は世界観の徹底という意味で評価できます。

戦闘時のカタルシクエフェクトも中二的だけどカッコいい。花が心臓を貫くのが幾原邦彦っぽくて良いです。

またキャラクターデザインも自分は非常に好きです。男性も女性もキレイ目でありながら、萌えるという意味でもありなデザインです。女性陣はみんな見た目は非常にかわいいんですが、全員現実では病んでるので引くんですけど…まあそれがこのゲームの良さなんですけど。




音楽はボスがボカロPなので、そのPの同じ曲がアレンジを変えてダンジョン、通常戦闘、ボス戦と続くのも徹底しています。ちなみに曲が移動時はインストなんですが、戦闘になるとシームレスでその時点からボーカルが載るのが地味に凄いです。これ実現するために常に2ラインで音楽流してるらしい。実装がすげえ。

ボカロっていいながら人間が歌ってますけど、日本語ボーカルでありながら、いかにもアニメ曲的な甘さはなく良いです。そしてだからこそラストバトルの曲がいろんな意味で泣けます。

バトル

今まで手放しでほめてきましたが、良い点も悪い点もあるのがここです。

良い点から行くと、イマジナリーチェーンというバトルシステムの斬新さは素晴らしいと思います。説明が難しいので公式読んでください。読んでも実際やらないとわからない気がしますが、やると難しくないです。
http://www.cs.furyu.jp/caligula/system/index.html

アクションゲームのようなバトルをターン制で行うというのは数々の試みがありましたが、一つの完成形ではないかと思います。

あとお金もアイテムもないという点は良かったと思います。イマジナリーチェーンが十分複雑なので思い切って省いてちょうどの複雑さです。


悪い点としては、かなり意識的にメンバを入れ替えたり、新しい連携を試そうとしない限り単調になりがちな点です。

特に相手が1体の場合、相手の初動の前に打ち上げが決まってしまえば、完全にワンパターンになります。そしてこのゲームの場合、相手が1体の戦闘が9割です。最初難しいと非難があったので敵を減らした結果かもしれないですが、バリエーション的にはつらいものがあります。

敵の見た目も全員人間型で同じ色で装備が違うだけなので、敵を見て攻撃パターンを変えることもありません。


また、難易度は最初難しいという意見が多くパッチで調整した結果か、簡単すぎる感じがしました。

自分はメインのシナリオしかやっておらず、意識してレベルを上げてもないのですが、ボスはもう少し歯ごたえがあってもいいのではと。ボス戦で一度も死なないゲームは初めてです。最終ボスすら20分程度で特にピンチにもならず終わってしまいました。

自分はかなりヌルゲーマーです。例としてFF10の終盤のボス戦はほぼWiki見てました。その自分が弱すぎるというのはよほどだと思いますが、Amazonレビューとか読むと難しいという意見もあるので、システムの慣れかもしれません。

まとめ

ゲームとしては問題もそれなりにあるのですが、非常に挑戦的で面白いタイトルで自分は好きです。

売上的には5万本程度ということでギリギリなんじゃないかと思いますが、次は是非PS4で続編を作ってもらいたいです。JRPG好きとして楽しみにしています。