ローマ法王になる日まで

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宗教乙と言わずに見て損はない作品。

ローマ法王の伝記ということで、心温まる感動作感しかないでしょう。ところが実は心温まるところか心が折れる作品です。しかしだからこそ面白く、21世紀における宗教というものが社会においてどうあるべきかという重い課題を突き付けてきます。

この話のメインは、現在のローマ法王が、35歳でイエズス会アルゼンチン管区長だったころの話です。当時は軍事独裁政権で、政府に反抗的だと即処刑や拷問という時代。教会そのものは弾圧対象ではないのですが、反政府勢力を匿ったりすると容赦なく殺されます。

しかも上司である大司教は保身のため軍事政権と癒着。一方司祭としては人々を助けたく密かに活動するものの、あまり目立った行動をする部下の司祭を危険だからと説得したりと、中間管理職として悩ましい判断を迫られます。

この映画には、信じれば奇跡が起きる生易しさはありません。自らの信念に基づく行動によってのみ現実は変わります。それらは大きな現実の前では些細なことに過ぎず、結局は何も変わらなかったりする。

しかしそれでも、神のためではなく、人々のために宗教というツールを使って何ができるのか。それこそが21世紀の宗教の課題であり、それを身をもって知っているからこそ、彼がローマ法王に選ばれたのだと感じます。