ニブロール: イマジネーション・レコード

ニブロールは今作もすばらしかった。
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ニブロールの何が自分にとって素晴らしいのか言語化するのは結構難しい。

一つは客観的にもわかりやすい点として、プロジェクションマッピングとダンスの組み合わせにおいて、他のダンスカンパニーと比べて別格的に突出していることがある。

今作はステージに描かれた円の使い方が凄かった。あまりにフラットなので、最初はそれが投影されているものだということにすら気が付かなかった。中盤までは大きな動きもなく、本作では映像をあまり使わない方向なのかと思っていたが、終盤が凄かった。


もう一つはかなり個人的な感覚だが、"共感に対する共感"を諦めた上で、その諦めそのものの共感の可能性を感じることだと思う。

通常物語においては、例えば友情、恋愛、家族等々、観客との共通の価値観を探って、それを巡る物語からの共感を前提とする。よく考えると友情、恋愛、家族というのは"同じ物事に対する感情を共有できる他者がいることは素晴らしい"という価値観である。つまり"共感に対する共感"である。

ただ、自分はそのような共感そのものに対する興味がほとんどない。"共感に対する共感"を前提とされることそのものが暴力的にすら感じる。しかし、それは無感情であることを意味しない。むしろ他人に文脈を共感されることを諦めた感情がある。

ニブロールの舞台に出てくるのは、断片的に切り刻まれた物語と、その不合理に対する大きな感情である。物語そのものの文脈はわからず、ただそこに対する感情だけが伝わってくる。それが不可解という人も多いだろうが、自分にとってはそれこそが文字通り自然に"共感"できる。

なおニブロールの一部の舞台は、プロモーションでなく本編が無料で公開されている。凄い時代になったものだ。興味ある方は是非。
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