グローバリゼーション パラドクス

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

自分は本を読み直すということが実はほとんどない。しかしこの本は、発行された2014年に一度読んでいて、昨年になって再度読み直そうと思って買い直した。理由はイギリスのEU離脱アメリカのトランプ大統領による保護主義の復活だ。

この本の先進的な部分は、そもそも自由貿易の推進こそが最大の成長をもたらすのであれば、自国への投資についてあれだけ有形無形の多くの規制を行なっている中国が 何故ここまで成長著しいのかという、至極当然の疑問に回答している点だと思う。

他国には解放を要求し、自国への投資は制限する。その政策が成長をもたらすのであれば、我々もそうすべきだという本音を隠さなくなったのが、昨今の保護主義の復活なのだとすると、それはポピュリストのバカな考えというだけでは済まされない。

もちろんそのようなジャイアニズム的な考えを全ての国が主張し、最後には武力で解決しようとするなら、それは帝国主義の復活でしかない。

しかし国民国家が、現代においても法の規制の及ぶ最も最大の単位であるという事実は当分変わらないのであれば、自国の状況に合わせてグローバリゼーションから距離を置くこともまた認められるべきである。それは全ての国家に同じく与えられる権利であるという主張は、傾聴すべき部分はあるのではないだろうか。

イギリスやアメリカの動きが狂気の愚策なのか、それとも意外な成功を収めるのかは正直わからない。しかしながらアメリカの経済はトランプ大統領に変わって2年以上経った今、意外と好調なように見える。

もちろん国籍による差別は許されない。しかしながら経済政策としての保護主義と、国籍による差別は本来全く異なるものである。それをあえて同一視しようとする考えの方が、大衆迎合的なのではないだろうか。