新北斎展

北斎展に行ってきました。実は前回の東京国立博物館北斎展には行っておらず、北斎の大規模な回顧展は初となります。

本展覧会の特色は肉筆画の多さではないかと思います。浮世絵は刷られたものなので多少は数がありそうですが、肉筆画は当然一点ものになります。

北斎の肉筆画、多くは墨絵に彩色したものですが、これが素晴らしくうまいのです。円山応挙かと見紛うばかりのリアリティと、ぼかしや空間の使い方のうまさ。浮世絵は構造上複雑なぼかしはないですし、北斎の絵というと割と詰まった画面構成が多い印象があり、非常に新鮮な感動を覚えました。

そして北斎らしいなあと思えるのが、そう行った肉筆画であっても、あくまで風俗画が主体なことですね。こういう絵は割と気張ったというか、中国の故事に基づく絵や仏画山水画が多かったりしますが、北斎はあくまで市井の人々の面白さにこだわります。

茶筅売りの絵が何枚もあったり、鬼の絵が何かの故事に基づきそうで実はよくわからなかったりと、やはり独特の親しみやすさがあります。

もちろんメインの版画も素晴らしいです。富嶽三十六景は何度見ても構図のすばらしさに感心させられます。そして北斎漫画はこれだけの情熱を何故持てたのかと思います。

もちろん描くのが好き、版元の要求もあると思いますが、後進を育てるためという目的もあったのではないか。根付などの参考画集も出しており、狂人のようでいて、業界のリーダーとしての自覚も非常に強かったのではないかと思うわけです。

やはり当たり前ですが日本を代表する絵描きなのだと思います。