ルート・ブリュック 蝶の軌跡

東京ステーションギャラリー
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都内のJRではこの展覧会の広告が沢山流れていますが、あれ見てもさっぱり面白さがわからないと思うんですよ。本物を見てなるほどとわかるというか。

この人の作品は陶板絵画なんですね。芸術品としての陶板絵画はいくつか方向があって、最も多いのはモザイクです。日本だと銭湯の絵なんかもあります。大塚国際美術館の複製陶板画なんかもありますね。

現代陶芸はよく考えると彫刻的な立体作品がほとんどで、平面の作品だけの作家は観たことがない。見慣れた素材なのにかなり新鮮でした。

写真を見てもさっぱりわからないと思うのですが、この線の中を塗りつぶしている部分は全て釉薬です。小さな七宝焼きのブローチではなく、50cmくらいはある作品です。

経歴も面白くて、もともと建築士を目指していて、家族の勧めでグラフィックデザインの道に進み、陶芸の経験が全くないのにアラビア製陶所・美術部門の専属アーティストになったとのこと。だからこそ、立体ではなく平面の素材としての陶板に先入観なく向き合えたのかもしれません。

1960年代以降は具象から抽象へと向かいます。抽象的な形である場合、陶板である必要があるのかという疑問が出てきますが、それでも素焼きと釉薬の透明感の対比、無理のない立体表現による陰影などは独特の面白さがあります。

展覧会の最後を飾る作品に"鳥"の作品を持ってきたのも良かった。どれだけ鳥が好きなんだというくらい前期作品に多く表れた鳥。今度は後期の抽象的な手法によって確かに羽ばたく鳥達が見えました。