となりの吸血鬼さん

やりつくされたように思われる「現代吸血鬼ネタ」でこういうのがあったかという感じですよね。

「となりの吸血鬼さん」は個別の要素を分解していくと、他の漫画や物語で既にある要素の寄せ集めなんですよ。現代吸血鬼、美少女、オタク属性、百合等。それらが絶妙なバランスであることによりオリジナリティが産まれています。

この作品で思い切った点としては「吸血鬼が身近な人間の血を吸いたいと思う」という鉄板のネタを封印した点だと思います。これはあまり他の現代吸血鬼作品でないのではないでしょうか。

冷静に考えるといろいろどうなのかと思う点はあれ、血は通販で買うことができると。そうなると吸血鬼の日光に弱いとかいう弱点が、全部萌え属性に変わってしまうんですよね。

あとソフィーと灯ちゃんの性格設定が秀逸ですよね。ソフィーにオタク属性をつけたことで、この漫画の読者層にとっては感情移入しやすい存在になって、ネタにも広がりができた。最初のネタの棺桶に美少女抱き枕が入っているのは衝撃的でした。

アニメでは出てこなかったけど美月さんの「女児アニメと日常系アニメは日々の癒しなんです」はわかりみしかないです。

灯ちゃんの人形好きで、ソフィーを「永遠に年を取らない人形のような美少女」と見てしまうことにことによって、行動が過剰になってネタとなるところも良いです。灯ちゃんも美少女なんだけど、キャラ的に濃くなることで、クールなソフィーとのバランスが取れるところがうまいと思います。

まあ自分は本作の灯ソフィー、きんモザの忍アリス、ふたりべやの桜子かすみみたいな、駆け引きもエロもない、単に愛情だけの百合っぽい関係が大好きなんですよはい。尊い...

アニメも原作の良さを十分に引き出した良いアニメ化でした。特に最終回は本当に良かった。

日常系アニメの最終回というのは難しいと思うんですよ。そもそも原作は大抵終わっていないし、日常系は大きな物語がないので、全体を締めるエピソードがない。アニメオリジナルになることがほとんどですが、無難な感動系を新規に作った感がでることも多いんですよね。

本作の最終回はアニメオリジナルなんですが、前半ではこの作品の根幹のネタを、原作に影響を与えない形で非常にうまく扱ったと思います。そして後半は鉄板の第一話の回想ではあるんですが、変わらないところと変わったところの扱いが本当にうまい。

本作に限らず日常系とはループする物語なのだと思います。そのループの中で少しずつ変わっていく部分もある。そこが象徴的に凝縮されているエピソードだったと思います。