美術展における音問題

美術展における音の問題はもう少し議論あってもいいんじゃないかと思うんですよね。ここでいう音というのは鑑賞者の話し声ではなく、美術展の主催者が意図的に流す音の話です。

現代美術の展覧会でよくあるのが、映像作品などの大きな音の出る作品の音が会場全体に響き渡って、他の作品の鑑賞の妨げになるパターンですね。

個展なら他の作品の音も展覧会の一部と言ってもよさそうですが、グループ展のような場合、静かに鑑賞したい静謐な作品の近くで、刺激的で大きな音の作品があって、鑑賞の妨げとなることは珍しくありません。

また作品そのものでなくても、インタビュー音声なども強すぎる場合があります。東京都現代美術館石岡瑛子展に行ってきたのですが、石岡瑛子のインタビュー音声が会場の映像作品展示以外の全てで大きな音で流れており、最初は興味深く思ったものの、同じ内容が繰り返し大音量で流れるので、率直に言って鑑賞の邪魔でした。

インタビューの内容自体が重要であること自体はわかります。しかしあれだけ会場の隅々まで同じ内容を繰り返し流す必要はあったのでしょうか。映像と一緒にインタビューを流すコーナーを作れば良かっただけではないのでしょうか。展示の一部のコーナーでインタビュー音声を流す構成はたまにありますが、今回はやりすぎなのではないかと思います。

その作品の鑑賞に神経を集中しているときに、他の作品やインタビューなどの意味のある音は鑑賞の妨げでしかありません。そこまで気になるなら耳栓なりイヤホンなりをしていけばいいという意見もあるでしょうが、鑑賞者がそこまでしなくてはならないのかという気がします。

映像インスタレーション作品の場合、音響も含めて作品であるということ自体は理解はできます。ただそれでも、ヘッドホンで音声を流すなど可能な限り配慮はして欲しいと思います。まあ今のコロナ下では接触するヘッドホン自体が感染リスクになるという問題もありますが。

正直難しい部分はあるとおもいますが、音声のある作品がない作品の鑑賞を妨げるような現状は、いずれの作品にとっても望ましいものではないように思います。