非婚化の理由は本当に経済的問題なのか?

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この記事自体はタイトル以外はいい記事だとは思うんですけど、この手の話を聞く度に思うのは、非婚化の理由は本当に経済的問題なのかということです。いやデータとして年収が少ない人の方が結婚できないのは知ってますよ。でも自分の周りって、正社員で、給与も別に平均からみて低くもなさそうな未婚男性が非常に多いんですよ。もちろん中には極度の非コミュやオタクや無職もいますが、そうでない人も多いです。今回これについて書いてみたいと思います。

  • 年収は原因でなく結果
  • 全員が結婚する社会は幸福な社会なのか
  • 社会学者が経済的問題を強調する理由

 

<年収は原因でなく結果>
まず、年収が本質的な問題なのかについて考えます。

すごい乱暴な例えですが、仮に20,30代の独身男女の全員の平均年収が200万円上がったらみんな1年以内に結婚すると思いますか? もちろん結婚する人は増えるでしょうが、全員結婚するということはさすがにないと思うのではないでしょうか。

そもそも、特に男性において年収の多い男性の方が結婚しやすいのは何故でしょうか? 女性は金しか見ない…というのはネタとしてはとにかく、実際そう思う人はあまりいないと思います。しかし、それ以外のコミュニケーション能力、外見、温厚な性格、向上心等のモテるための能力が、年収を高めるための能力にも直結するということを否定する人もあまりいないと思います。それらを総合した最も計測しやすい結果が年収なわけです。まあ、モテるけどお金がない人、その逆もいますけど。

だとすると、平均年収を上げることに意味がないことはわかります。年収において重要なのは絶対値ではなく、結果としての相対値だからです。


<全員が結婚する社会は幸福な社会なのか>
良く言われる話に「将来結婚したいか」というアンケート結果の「したい」という結果の高さを元に、「結婚したいと思う人が全て結婚できるのが理想」という理論があります。本当にそうなのでしょうか?

そもそも「結婚したい」は「相手が誰であってもいい」わけではないですよね。現在では生活するための経済的な条件同様、恋愛対象であるという点がやはり切り離せなくなっている。「恋愛と結婚は別」ともいいますが、「あなたのことは全く恋愛対象として興味はないですが、結婚の総合的な利益を考えて結婚しました」と公然と言うことが、現在では望ましいとは思われないわけです。「結婚したい」にはこれは含まれない。

恋愛というのはものすごく客観的に見れば、限られたより良い資源を奪い合う競争です。これは今も昔も変わりません。だからこそ面白く、過去から定番の物語となってきたわけです。それをそのまま結婚に当てはめると、競争的になるのは必然です。

これもよく言われる話ですが、昔は女性は結婚しなければ生きていけなかった。昔のように女性や逆に男性を極端に差別することによって結婚しなければ生きていけないようにすれば、恋愛などという贅沢は言わずにみんな結婚するでしょうが、それがいいとは誰も思わないでしょう。「好きでない人と結婚しなくてもいい社会」は「全員が結婚する社会」に比べてむしろ幸福なのです。


<社会学者が経済的問題を強調する理由>
ところで、非婚について社会学者の人ももちろん経済的問題以外のいろんな問題を指摘しますが、最後は経済的問題とまとめることが多いです。これはなぜなのでしょうか。

ちょっと視点を変えて考えてみると、社会学者のクライアントは誰でしょうか? もちろん直接的には大学なのですが、国や地方自治体という考えもあります。非婚化というのは少子化問題が大本の話ですが、きちんとした本に載っているレポートの元は国や地方自治体の委託による調査に基づく場合が多いようです。まあ当然ですね。

そこを踏まえて考えると、国や地方自治体に対し、その原因を社会学者が経済的問題と言いたがる理由は「計測可能である」「改善可能である」の2点になります。レポートを書く場合に年齢、年収は定量分析できますが、他の要素はかなり難しい。女性の場合は容姿が大きく関係するというのはみなさんわかってると思いますが、容姿が悪いほど結婚できないというレポートを国に出せると思いますか? まあもちろんエッセイとしては書けると思いますが、国に出すレポートに「容姿を定量化し…」とか無理でしょう。ちょっと読んでみたいけど。

そして「改善可能である」も重要です。極端に言えば、恋愛が結婚の前提条件であるという認識を全員から完全に取り除くことで、結婚する人を増やすことは可能かもしれない。でもそれって政策として無理ですよね。「出会いを増やすための官製お見合いイベント」みたいなのはやってるみたいで、これは改善可能な例です。しかし「経済的問題」が一番の理由は簡単。既存の政策に対して何もする必要がないからです。「経済的問題」を解決しようとしていない国や地方自治体はない。「経済的問題なら仕方ないね。そっか、いつもの仕事やろう」で済まされるわけです。男性や女性の特定の性の問題にしないことにより、無用な非難をさけることも可能です。


<まとめ>
自分は別に経済的問題が問題ではないという気もないです。子供を育てるということは経済的も大変ですし、かりに子育ての経済的支援が今後より充実したとしても、ベースラインとしての経済力は当然必要でしょう。ただ、非婚化の解決は、少子化問題解決の手段であり、少子化の解決は、年金問題の解決の手段に過ぎません。手段の手段の解決に非現実的な目標をかかげるより、全体のシステムを解決するために他にやることがあるのではないでしょうか。