ニブロール see/saw

実を言うと自分はsee/sawについて少し心配していた。理由としては震災を意識した作品で表現が直接的という感想があったことで、作品が過度にナイーブになのではないかと思ったのである。結果としてはいらぬ心配だった。地震、原発、がれきといった特定の事象を当てはめることはもちろん可能だが、より一般的なカタストロフィとその後を扱う作品になっていたように思う。

YCCという場所は初めて行ったのだが、この菱形の構造は映像がダンスと同じくらいの強度をもつニブロールにとっては理想の環境だったのではないか。映像の中にダンサーが、そして観客も入り込むということで、これまで自分が観た公演とは一歩進んだ濃密な舞台を感じることができた。

多人数のエキストラダンサーも効果的だった。何より登場シーンがあまりにも圧巻だった。叫ぶダンサーはニブロールではある意味おなじみの光景といえなくもないが、あの狭い空間で、ホールに比べるとそれほど多くない観客に対してあれだけの人数で叫ぶ。合唱でもなく単に叫ぶという、まあそれだけなのだが恐ろしかった。そして面白かったのが、それまでほとんど無視されていたシーソーが、最初にいきなり「門」として機能したこと。まさに地獄の門が開いたというシーンであった。

あとかなりびっくりしたのが最後。コンテンポラリも最後はやっぱりみんなで踊って終わりみたいな構成ってやっぱり多く、それはそれで客も満足する構成で別に悪くなく、ニブロールもやはりそういう部分は多かれ少なかれあったと思うのだが、そういう部分がなく唐突に終わる。というかあの最後こそが、カタストロフィーを忘れて日常に回収されてしまう我々なのかともとは思うのだが、かなりびっくりしたのは確か。

まあ相変わらず好き嫌いのわかれる表現とは思うが、矢内原さんにはこれからもガンガン我が道を進んで頂きたいと期待しています。