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立ち位置というのはここまでものの見方を変えるのかと思った公演。

本公演でかなりびっくりしたのは観客が全て立ち見で、舞台というものが基本的にないこと、ダンサーは観客の中にも入ってくるし、時には観客の体ともコンタクトする。もちろん仕込みなしである。ストリートダンスだとよく考えれば当たり前なのかもしれないが、自分はそのような経験がないのでかなり新鮮だった。

観客席と舞台との垣根を取り払いたい的な話はよく聞くけど、実際やるのはかなり勇気のいることだったのではないか。ストリートダンスと異なるのはダンサーが裸足という点で、観客が誤って何か危険なものを落とさないとも限らない。舞台の仕掛けもそうだが、観客を信頼する覚悟が必要になる。

その成果はかなり大きかったように思う。一つは観客を巻き込む形を実に自然で無理のない形で行えたこと。観客が舞台に上げられるでも、役者が客席に降りるでもない、そこにいる人と人とのコンタクトというある意味当たり前なことを行ったことによって、直接コンタクトしてない他の人にも自分の体を認識させたのは大きいと思う。

もう一つは、日常の中の異形という視線を提供したこと。本公演は立ち見ということで大道芸を観るようなほのぼのした雰囲気を想像するかもしれないが、ちょっと違う。あえて不謹慎な言い方をするなら、電車の中でちょっと行動が残念な人がいて、不快感を感じながらも、その行動に興味をもってしまうという感じなのである。

ダンサーの人は美人なのだが、動きがアレなので正直決して目を合わせたくない感じ。というかダンサーが自分の方来たら思わず逃げてた。

コンテンポラリダンスなんて変な動き上等なのだが、普段は「舞台」であるが故にその異形さを自分とは違った世界のものとして「鑑賞する」 ただその動きを仮に「日常」の中で見かけたとすると、不快なものとして「目を背ける」その矛盾を意識的に感じ取ることができたように思う。