カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生

カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生

それこそ「いわゆるサブカル」方面で話題となっている本だが、意外と普通に面白かった。

確かに失敗する話しかないのだが、オチがみんなキレイについていて笑える。オチのないライターの話も結構少年漫画的な前向きなまとめ方となっている。決して爽やかではないが、暗くなるだけの話というわけでもない。

マンガ表現としても、実在する雑誌のフォーマットを生かした演出とか、さすが本職のライターだけあってなかなかやるなと思った。カーミーのオチはレベル高い。

人によっては痛すぎてつらいという人もいるだろうが、よく比較されるモテキにくらべれば、自分にとってはこっちの方がはるかにライトな感じ。まあその点については、自分がここで出てくるオシャレサブカルの人とは若干方向性が違うのもあるでしょうけど。

本書に対する意見として「結局はこのような生き方を小馬鹿にしている」という意見があるけど、自分はそうは思えなかった。

これはサブカルに限らず、オタクでもアートでもその界隈にいる人であれば皆そうだと思うのだが、ある程度年を取ってしまうと、自分の好きなことの価値を信じる反面、それに対するある種の自虐的客観性ももちうるのではないか。たぶんその程度の客観性を維持できないと、続けられないと思う。

そして、時には自らを自虐的に語りながらも、好きなことを続ける人々。そしてその多くは失敗してさらなる嘲笑の種となる人々。でもたぶん、その中からしか「文化」は生まれないんじゃないかという気がする。

それらをわかった上でこの作品は、多くの失敗した人たちを、決して爽やかではないサブカル好みの「笑い」に昇華する。多くの失敗者たちの人生を張った「ボケ」に対する「ツッコミ」なのだと思う。彼らは言うだろう

「そのツッコミいただきたかったんですよ~」