篠原聖一 バレエ・リサイタル ファム・ファタル

バレエだからこそ追求できる方法論の可能性があるのだなと。

ファム・ファタルをめぐる有名な3つの物語(カルメン、椿姫。サロメ)をオリジナル振付でバレエ化したトリプル・ビルと言葉にすると身も蓋もないのですが、バレエの企画としてはかなり特異なように思います。

映画とか文学ならテーマを絞ったアンソロジーというのはいくらでもありそうです。コンテンポラリダンスでも、1つのテーマを元にした三作のオリジナル作品というのもある。しかしバレエにおいてはほとんどないように思います。

トリプル・ビルという形式はありますが、その場合、統一の観点は振付家、作曲家、形式だったりしますが、それらはもともと三つ組でやることを想定したものではなく、全く独立したものをその観点で集めたというだけです。

本作の場合、三つをそれぞれ別の作品とすることもできなくもないですが、三つが揃ってこそ意味がある。そのことが象徴されているのが、ファムファタール役は三作とも同じダンサーなのに、公演はノンストップで90分続くという構成だと思います。無茶するよね…

形式の話ばかりしてますが、舞台演出も光と暗幕をシンプルだけど丁寧に効果的に使った構成でいいです。サロメのツァラトストラは正直ちょっとあれな感じがしましたが…これだけ話知らなかったのもありますけど。振付もいいのですが、席から舞台正面が見えず、肝心な部分がよく見えないことが多かったです。

日本でもバレエのオリジナル作品で面白いものがでてくるのはいいことですね。