草間彌生 わが永遠の魂

草間彌生の回顧展は何度も観てますが、大変いい展覧会でした。
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草間彌生展「わが永遠の魂」国立新美術館

まず最初に「草間彌生からみなさまへ」っていう作家のメッセージがあるんですが、これがすばらしい。いや作品観る前からすばらしいも何もないんでけど、「アーティストとして真摯に生きるとは」ということを、これほどまでに強く感じた文章はあまりない。

社会の変化や美術そのものの流行、もちろんその中で草間さんも評価されて来たわけだけれど、同世代の作家で鬼籍に入られるかたも多くなってきたなかで、作品を作って、後の世代に残すことが作家のなすべきことである。あたりまえすぎることですが、非常に深く染みる言葉だと思います。

そしていきなり新作の「わが永遠の魂」の展示。ものすごく広い空間の四方を隙間なく埋める正方形の巨大な絵の数々。それらに見られる確かな草間彌生らしさ。それに圧倒されます。

晩年になって同一のテーマの連作を多く描くというのは多くの作家に見られます。面白いのはその連作をどう見せるかという点で、完全に同じサイズの絵を隙間なく並べることで、それ自体が巨大な作品のようなインパクトを持つ。写真ならよくありますが、実際の絵画でそれをやった人はあまり知らないです。

この独立した画像を正方形として並べるやり方は、iPhoneのカメラロールで一気にUIのトレンドとなった部分もあると思っています。「わが永遠の魂」シリーズの製作が2009年、iPhone初代が2007年ということも考えると、その影響もあるのではと思います。そしてこのコーナーはスマホで写真撮り放題。この年にしてきちんとトレンドをつかむところが素晴らしいと思います。


この展覧会は構成も良くできていて、この新作の後で、初期からの作品を年代順にみて、また最後に新作の部屋に戻ってくる構成になっています。これ見ると、新作は1950-60年代とやってることが一貫しているように見えるのが面白いです。

近年は草間さんは企業コラボを精力的にやっていたこともあり、花とか少女とか水玉とか「カワイイ」文脈で受け入れられる作品が多かったように思います。

それは作家が好きでやってるんですからいいんですけど、草間彌生ってそんな生ぬるい作家じゃないんですよ。生まれつきの幻覚症状があって、芸術なしでは生きられないという業を背負った作家なんですよ。そういう面を再確認できて非常に良かったです。