パロディ、二重の声

「アートって楽しい」的なゆるふわ展覧会かと思っていたが、1960-70年代の現代美術からポップカルチャーへの流れをパロディという側面から辿った真面目な展覧会だった。

パロディ的なものは江戸時代の漫画的なものでもいくらでもあるわけで、これがパロディの元祖というわけでは全くない。しかし70年代のビックリハウス的な流れが、60年代のネオダダ的な流れから来ているのは間違いないわけで、現代美術がポップカルチャーに広まっていく例としては面白いと思う。

個人的に面白かったのは最終章でパロディを巡る裁判を扱ったこと。ただ残念なのは展示方法で、単にそれを扱った新聞記事と、判決文の抜粋をそのまま見せるだけ。これはもう少しきちんと解説しても良かったのではないか。
パロディ事件 - Wikipedia

あまりきちんと覚えていないので正確性に欠けるかもしれないが、この裁判は一審、二審、最終審と論点を見ていくとそれぞれ違っていて非常に面白い。

まず大前提として、元の写真と、マッド・アマノ氏のパロディ作品は、作品として訴えることが異なるという点では全員一致している。

そのうえで、一審、二審ではそれらが別個の著作物かという点が焦点となっている。なぜなら別個の著作物であれば同一性保持権の侵害にあたらないからである。

一審では別個の著作物ではない、二審では別個の著作物であるという結論になっている、論点は「作品として訴えるものが異なる場合に別個の著作物か」という点で、一審では否、二審では是としている。

最終審は全く異なる論点となっており、アマノ氏の作品は、元の作品を「引用した」という解釈になっている。その上で「引用の必要要件を満たしていない」という点から違法であるという解釈になっている。

この話は現代においても、いやデジタルコピーし放題の現代だからこそ面白い話であり、そのような点をもう少し丁寧に解説するのも美術館の役割ではないだろうか。