熊谷守一 生きるよろこび

「遅咲きの作家」と言われる人であっても、通常40代くらいにはその作家の代表的な作風の作品があるものです。

ところが熊谷守一の場合、代表的な作風の作品が出てくるのが70代になってから。それまで他の仕事をやっていたわけでもなく、ずっと画家のみをやっていて、70代で代表作がでてくるという、他にない遅咲き作家なわけです。

そこにたどり着くまでの作品も見られるわけですが、玄人受けはしそうだけど、この作家ならではのものがあるかと言われると、微妙な作品群なわけです。そのなかで、確かにひとつあか抜けた感じで代表的な作風の作品が出てくる。

会社員であれば、同じ職種でずっと働いて、70歳になって脚光を浴びるとかほとんど考えられない。それまでに定年になって、ぱっとしない会社員生活だったと考えるか、これまでの仕事と全く別の領域をめざすかどちらかでしょう。

人生は長いし、まだまだ何あるかわからないなと思いました。