いわさきちひろ、絵描きです。

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201807_chihiro.html
いい展覧会だった。久しぶりに図録を買ってしまった。

いわさきちひろについてはそれほど知っているわけではない。母親が好きで、絵本「あかいふうせん」は家にあったのを覚えている。よく考えると他の絵本は何も覚えていない。子供心に印象深かったのかもしれない。

意外だったのは、共産党員でかつ新聞記者だったことである。あの優しい絵のイメージからは想像できない。しかし、子供や母親、労働者といった弱い立場への強い共感が、あの絵の根底にあるのだと思うと納得する。

当時の新聞や雑誌の挿絵が面白い。特に面白いのは紙芝居で、内容的にも興味深い。教育用の女子寮の管理の話は、今の視点だと正直何が問題なのか今一つよくわからない。一方でアンデルセン等の物語などの絵は素晴らしい。

いわさきちひろの絵は色彩も素晴らしいが、線が最小限でありながら繊細な感情を見事に表している。円山応挙のような完璧さがある。よく考えると余白の使い方、横山大観の朦朧体のような色彩の濃淡による表現など、日本画的とも言えるかもしれない。

ただ思うのは、絵本はやはり本来の絵本の形でまず読むべきではないか。絵本は興味はあるけど、子供のいないおっさんが絵本を大人買いするのもなかなか難しいものがあり、そもそも真面目に集めだすと場所的に厳しいものがありそう。

もしかすると名作絵本のデジタル化は、子供より自分のような大人に需要があるのかもしれない。まあでも自分は漫画を紙で読むくらいなので、紙でないと満足しないかもな。