2018年良かったもの 書籍編

最後に書籍編です。
今年は読んだ本の数自体はそれほど多くなく、その代わり長い本を読むことが多かった気がします。
短いビジネス書的なものも読んでるけどほとんど印象に残らないというか。ビジネス書はおやつみたいなもんですよね。
結局今年1年かけて読み終わってない「旧約聖書」という超長い本もありますね..

ティール組織

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

今年一番向き合った本はこれかもな。
読んだきっかけは会社の出来事なんですが、結果として会社で読書会までやりました。
結局のところ、ボトムアップの自主選択と、トップダウン全体最適のどっちを信じるかという話なのではという気がします。
「個人を信じる」のは美しいけれど、それで本当にこの資本主義社会で持続可能な組織ができるのか。
資本主義自体が、社会主義というトップダウンとは逆のボトムアップの自主選択で成功したはずが、結果としては格差の拡大で多くの人が幸福に見えない。
その問題に対して、理想論かもしれないけど考える価値のある本だと思います。

21世紀の資本

21世紀の資本

21世紀の資本

正直読むのは結構大変でした。よくこれがベストセラーになったなと思います。
実直にデータを積み上げる。そのためになるべく同じ基準のデータを揃える。データがない部分はわからないと素直に言う。
当たり前のようですが、まず自分の主張があって、それに都合のいいデータが並んでいるだけの書籍も新書などでは少なくありません。まあ分量の制限もあると思いますが。
そんな本もある中で、とにかくデータの量と、考察の詳細さ。そしてそこから導き出さされる厳しい事実と、それに対する明確な提案は強いです。
また"おわりに"で書かれている社会科学とはどうあるべきかという話がすごくいいです。

サピエンス全史

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

これだけ大きすぎるテーマをよくうまくまとめたよなという本。
認知、農業、科学という3つの革命と、貨幣、宗教、帝国という3つの発明。
このフレームワークは非常に強力であり、あらゆることを歴史的に考えるときにまずは使ってみることができるのではないかと思います。
科学革命の先にホモ・サピエンス自体の終わりも見えるのではというSF的な話が最後に来るのも面白いです。

「中東」の世界史

「中東」の世界史

「中東」の世界史

今年はイランに行ったということもあり、中東史の本をいくらか読んでいたのですが、その中でも近代中東史について、非常によくまとまっており、面白かったです。
少なくともこの本の内容レベルの歴史を知らないと、現代の中東の問題は何も理解できないなと思いました。
他の歴史の本の歴史観の検証をベースにする書き方は読みにくい部分もありますが、日本の世界史教科書の記述等も出てきて、歴史を記述するということの難しさも知ることができました。

魔法の世紀

魔法の世紀

魔法の世紀

落合陽一って正直こいつ誰だよ感しかなかったんですよね。NewsPicksのあの意識高い系の雰囲気が嫌いだし、メディアアーティストとしての作品も全く観たことなかったし。
正直わりと冷やかし感のあるつもりで買ったのですが、現代美術を考えるうえでかなりいい本でした。逆に現代美術に興味がないと、この本の意味はよくわからんのでないかと思います。
正直自分はこの人の考え方に同意できない部分も多いです。実はかなりエッジの効いた考え方で、人間性的な視点からは問題があると考えられてもおかしくない部分もあるように思います。
それでも人気を集めているという事実は、なかなか面白くも怖くもあります。