ロマンティック ロシア展

国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア | Bunkamura

ロシアと日本は意外と自然の感覚が近いのかもしれない。

トレチャコフ美術館というロシアの美術館の所蔵品の展覧会でである。このような展覧会では冒頭で館長のメッセージが紹介されるのだが、その中で「何度も貸し出しているが、喜びである一方、一抹の不安もある」といったニュアンスの文面があるのが気になった。その後その言葉には触れずに話は進むのだが、その不安が何なのか少し気になった。

正直ロシア美術なんて人がいないと思ったら会場は満員だった。国民感情的にはロシアと日本は韓国や中国ほど悪くもないが、それほど良くもないだろう。それなのになぜこんなに19世紀ロシア美術に人気があるのか。不安はもしかしたらそこなのかもしれない。

まず思いつくのが日本におけるクラシックバレエの人気だろう。白鳥の湖などの今でも有名なクラシックバレエのマスターピースは多くが19世紀のロシアで生まれている。そして展覧会の開催場所はオーチャードホールのある文化村である。バレエファンなら教養として当時の美術に興味はあるだろう。

展覧会を観て気が付いたこととして、ロシアと日本は意外と自然の色合いが似ているのではないかということだ。もちろん植生はちがうだろう。しかし、例えばフランスの絵画の自然と比べるとわかりやすいのだが、フランスの鮮やかな暖かみのある色というのは、日本にはあまりない。日本の自然はもっと渋い茶色に近い色だ。それがロシアの絵画と一致する気がするのだ。

また少なくとも19世紀の自然や風俗画においては、文脈を読む必要が少なく見やすいのもあるかもしれない。元々の自然派クールベのように非常に思想的に先鋭的で、見た目どおりに自然の美しさを愛でるものではない。しかしロシアまで来てしまうと、素直に自然や人間の美しさを描く感じになっており、そこに安心感があるのかもしれない。

トレチャコフ美術館はイコンのコレクションも素晴らしいらしく、個人的には是非そちらも日本でも紹介してほしいものである。それこそ人が来ないかもしれないけど。