自分は強度の内向型なのですが、この本は結構納得する部分もあり、考える部分もありました。
内向型の生き方戦略―「社会から出て、境地を開拓する」という生き方提案
- 作者: 中村あやえもん
- 出版社/メーカー: あやえも研究所
- 発売日: 2017/11/06
- メディア: Kindle版
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この本は内向型の定義は参考文献にもある内向型を強みにするです。この本ならではの特徴として、生き方を「社会維持型」と「境地開拓型」にわけて、外向型を社会維持型、内向型を境地開拓型の生き方が向いているのではと提案しているところです。
「内向型を強みにする」はいい本だと思いますが、実際は外向型優位の社会でどう生き抜くかという内容で、強みにできる部分がなかったことに比べると、こちらの方がより強みを具体的に述べています。
確かに自身のことを考えてみると、境地開拓型の状況の方が力を発揮し、興味を持って当たれたように思います。これは趣味も仕事でもそうですね。正しいロールモデルが決まっている場合、そのコミュニティ内での競争に対応できず興味を失ってしまうことが多いです。
しかしこの本で難しいなと思うのは「ジョブスは社会の中心にいる」ことなんですよね。この本では境地開拓型の理想モデルとして、ジョブズのような「自らの好きなことを貫いて成功する」ことを説きます。
でもそれは現代において最も社会の理想とされるモデルで、そうなるためにいかに外向的手段を駆使して競争に勝つかという話で溢れているわけです。曰く「社外のコミュニティを大切にしろ」「好きなことをアウトプットしろ」等。そういうことが苦手なのが内向型で、その競争に勝ち抜けるなら苦労していないよと。
境地で成功する人は注目されます。ただその成功を勝ち取った時点でそこは境地ではなくなってしまう。その境地で実際にお金を得るまでになるためには大変な努力が必要で、そうなった時点で外向型にはかなわないわけです。
だから本当の境地は評価されない場所、つまりそれでお金を稼ぐことは難しい場所にしかなく、だからこそ境地に行きたくても難しいという状態。これが多くの人のいる状況なのではないかと思います。
もう一点大きく違和感があるのは「内向型は自分を変えるのが得意」という点です。マイペースで自分を周りに合わせて変えるのが苦手だから苦労しているんですね。外向型が他者に変化を要求するのは身勝手だからではなく、自身が社会に合わせて自分を変えるのが得意だからです。
その意味でこの本は「ジョブズという社会の中心に合わせて自分を変えろ」という実に外向型の発想で書かれた本であるとも読めます。
そうではなくて、自分を変えるのは無理だから、自分に合った境地に移動しろ、そこで生きていけるかは知らないけどというのが本来言うべきことですよね。
とはいえ、境地というのは別に今すぐ会社を辞めてクリエイターや研究者になれというわけではないだろう。もう少し現在の仕事に近いところでいかに自分にとっての境地を見つけるかというのは、内向型の生き方にとっては参考になる部分もあると思います。