GWに韓国ソウルの国立中央博物館に行ってきました。
1. 日本とどこが似ていて、どこが違うのか
2. 日本との時代的な分岐点はどこにあるのか
3. 朝鮮の仏教美術はどうなっているのか
実は上記の3つはほぼ同じポイントに立脚します。それは李氏朝鮮時代の仏教弾圧です。日本も明治時代に廃仏毀釈を行いましたが、李氏朝鮮は500年も続くわけで影響が全く異なります。
李氏朝鮮は1300年代でちょうど日本では室町時代と同じころに始まります。それまでは韓国でも日本と同じように仏像や仏画が作られていたようです。そもそも仏教自体が日本に百済から伝来したわけですし。
日本との違いとしては、銅像よりも鉄像が多いようです。また、菩薩や如来等の仏以外の像はないわけではないが、それほど多くはないようです。
結果として、古い朝鮮の仏画や仏像が日本にしか残っていない、むしろ日本のほうが多いという状態になってしまった。そのため近代になってまた韓国で仏教がそれなりのシェアを得るに従い、日本にある韓国の仏像や仏画を返すべきだという主張が出てくるわけです。
また、少なくとも国立中央博物館の展示だけを見る限り、李氏朝鮮時代は磁器以外はそこまで日本や中国に対して技術水準の高い美術が発展しなかった印象を受けます。
1階の時代区分別のコーナーでは、李氏朝鮮以前は美術関係の展示が多かったのに対し、李氏朝鮮以降は文献の展示が主になります。美術品の展示は2, 3階の種別展示になるのかと思うのですが、仏教美術と磁器以外は今一つな印象です。仏教美術は当然李氏朝鮮以前がメインです。
特に書画は展示スペースが広い割には実物の展示は少なく感じました。保存状態も良くないものが多かったです。書画は保存のため頻繁に展示替えが必要なので難しいのはわかるのですが、もう少し何とかしてほしいところです。
これについては日本や中国に攻められたり、朝鮮戦争で全土が荒廃したりしたので、そもそも可燃性の文化財が残っていない事情もあるのかと思います。
磁器についてはさすがと言ったところ。磁器の透明感と色数の少ないシンプルな装飾が、独特の美しさを生み出しています。これには儒教の禁欲的な性格が美術に良い方向で作用しているのではないかと思います。