アニメーターの仕事がわかる本

アニメーターの仕事がわかる本

アニメーターの仕事がわかる本

実質会社員の個人事業主という手段を使えば、最低賃金なんて無意味な世界は簡単に作れるんだなというのが一番の感想。

タイトルはよくある業界ガイドみたいで、実際にそういう意味で業界に入りたい人にも役に立つでしょう。でもそれ以上にアニメーション業界の労働問題を丁寧に語った本という意味合いが強いです。

いろいろ問題はあると思うけど、やはり一番の問題は動画ポジションの平均年収125万円という数字でしょうね。

もちろん夢を売る業界はどこも厳しいというのはあるだろうけど、声優や漫画家と根本的に異なる点は、ポジションが少ないのではなく、人手不足なのに驚くほど安いという点かと。

労働に比べて過剰に給与が安い職種というのは何らかの理由があるのです。アニメーターという仕事は1のように自分も思っていたけど、実際は5であるというのが衝撃的ですね。

  1. ポジションが少なく競争が激しい (声優、漫画家、芸能人等)
  2. 顧客から貰えるお金が公的に決まっている (医師、介護、保育士等)
  3. 必要なスキルが比較的低い (コンビニ、飲食店等のバイト等)
  4. 顧客が少ない (多くの非常にマイナーな仕事)
  5. 雇用に近い関係なのに個人事業主として契約している (フランチャイズ店の店長等)

闇が深いという意味ではかつては代表格だったIT業界に自分も長くいますけど、それでもまだ雇用という盾に守られていたのだなあと。フリーランスもいますが、優秀な人しかならないので、むしろ年収アップを目指してなるわけです。

問題解決案として社員化という話がでています。ただIT業界もまさに同じ問題がありますが、プロジェクトが始まると人が大量に必要となり、終わるといらなくなる仕事における社員化は、下請け会社を作ることによって雇用の流動性を確保する方向になりがちなんですよね。まあそれでも個人事業主よりはましだと思いますが。

皮肉なのは制作本数が過剰に増えているのは、昨今の海外の売上で市場が成長している非常に稀な市場だからということ。お金を払わない人がいるからではなく、市場が成長しているが故の歪みなわけです。

つらいのは消費者にとってできることってほとんどないんですよね。せめて何らかの問題のあるアニメでも、いろいろ大変なんだな、作っていただけるだけありがたいと感謝して観ることくらいですかね。