復活の日

復活の日 (角川文庫)

復活の日 (角川文庫)

まさに今読むのが最高に面白い本。

この本の説明をするとその理由はすぐにわかります。日本沈没で有名な日本SF界の巨匠、小松左京の代表作の一つで、テーマがウイルスで滅亡する世界です。はいわかりましたね。

この本は内容もだいたい知っていたのですが、正直自ら読もうと思ったわけではなく、単に読書会の課題本の1つがこれだったというか。この時期に「復活の日」とか面白すぎるだろという軽い気持ちで読み始めました。12月の年末休暇に入る頃です。

よくある軍事利用用のウイルスが拡散することで世界が滅んでいく話なのですが、うまいのは単なる「殺人ウイルス」ではなく、表面上は従来のインフルエンザが、SF的仕掛けを入れることによって、爆発的拡散と高い致死率を持つようになるところですね。

これまで既に克服されているように思えた病気に対抗できなくなっていくという部分が恐怖をあおる部分ではないかと。最初は海外のいつもの風邪の流行だと思っていた病気が知らぬ間に日本にも侵食し、医療が徐々に崩壊し、最後には都市が死体に溢れることになる。

その過程を読みながら、リアルタイムに東京の1日の感染者数が1000人、2000人と爆発的に増えるのを目の当たりにしていくことに、これまでの読書体験では感じたことのない恐怖を感じました。

初版が1964年ということで、今から見るとSFとしてほほえましく読める部分もあります。しかし、電車の乗客全員がマスクをして小さな咳にも疑心暗鬼になる描写など、まさに今を描いたような部分も多いです。

パニックになっても日本では暴動は起きないという話は、当時の希望的な美徳として描かれていますが、その後の各種災害においても日本では暴動になることはないという点は、それなりに誇れる点ではないかと思います。

この世界が滅びる過程だけでパニック小説としては十分なのですが、最後にまたSF的仕掛けをいれることで、復活に繋げるところがやはり凄いところかと。最初何でこんな話の方向にするのか謎だったのですが、最後は物語的な意味でもSF的な意味でも見事としか言いようががない。

小松左京日本沈没は最近でも何度か映像化されていますが、地震というものが身近な災害だからかと思います。復活の日もまた映像化されるかもしれません。さすがに今ではないでしょうが。

いずれにせよ普通に良いSFなので今こそ是非読むべきかと。