フェミニストが嫌いな理由

私はフェミニストが嫌いだ。正確に言うと特定の誰かが嫌いというわけではなく、フェミニストの主張の中には同意できる部分もある一方で、どうしても同意しがたい主張もある。

これについて一度自分自身の言葉でまとめてみることが必要なのではと考えた。なお東京オリンピックは招致の時点から反対なのでどうでもいい。

自分は別に常日頃から表現自由の戦士として日々ツイッターで活躍したりはしていない。フェミニズムについて特に詳しいわけでもないが、以下の本は読んだ。他にも読んだと思うが昔なのであまり覚えてない。
はじめてのジェンダー論 有斐閣ストゥディア
私たちにはことばが必要だ

朝日新聞の有料会員なので、ここに出るレベルの議論を前提としている。また個別の施策そのものの是非ではなく、論理そのものの出発点的な部分を考える。

自分のフェミニズムの理解

そもそも論として自分の理解ではフェミニズムとは"男女の社会的影響力の格差を近付ける試み"という理解である。

まず現代において"男女の社会的影響力に差がある"ということは各種データからも同意できる。

"社会的影響力"とは何かということだが、ジェンダーギャップ指数で扱うような経済力、政治力、健康、教育でおおむね間違いないだろう。この格差を是正すべきであるという基本原則には賛成している。

長いので今後は"男女の社会的影響力の格差を近付ける試み"を"男女格差是正"と呼ぶ。

男女格差是正は最も重要な問題ではない

"男女格差是正"は問題である。ただしあらゆることに優先される最も重要な問題であるとは限らない。

あまりにも当たり前すぎるように思うが、この確認は重要である。なぜなら、他にも考慮すべき視点があるという話をするとすぐに「差別主義者」呼ばわりする主張がたまにあるからである。

男女格差是正の具体的な施策を検討することは重要

上記の"最も重要な問題ではない"という前提の上で、それでも他の要因も考慮し、現実的で効果的な男女格差是正の具体的な施策を検討することは有意義で重要なことだと考える。

自分は以下のような施策については基本的には賛成である。ただし無条件に賛成というわけでもなく、諸外国の事例や問題も考えながら、総合的に判断する必要があると考える。

  • 夫婦別姓
  • 国会や地方議会におけるクオーター制
  • 男性の育児休暇の取得必須化
  • 現実女性の児童ポルノの規制

性的嗜好の強要には同意できない

この話は以前書いたので簡単にだけ説明する。
社会的に正しい性的嗜好 - yamak's diary

女性は社会的強者を好む性的嗜好があり、男性は社会的弱者を好む性的嗜好がある。それが男女格差を産む原因になっているという考え方だ。これを是正するためには、男性も社会的強者を好む性的嗜好に社会的に矯正する必要がある。

この主張そのものを直接見ること自体は実際はない。しかし、主に男性の性的嗜好に対するフェミニストの言うことを論理的に解きほぐいていくと、最終的に上記の結論に行きつかざるを得ない。

この視点では「やさしい女性が好き」は誤っており、「お金持ちの女性が好き」は正しくなる。「やさしい女性が好き」は女性は優しくあるべきという偏ったジェンダー理解を助長し、女性をケア労働という収入の比較的少ない労働に向かわせる可能性があるからだ。

他のエントリを見ればわかると思うが、自分は女子高生が社会的影響力を全く強化しない活動にいそしむ日常系アニメの強度な愛好者である。それについて悪びれる思いも是正する気も全くない。

なお、それらの愛好者をキモオタ扱いすること自体は差別とは思わない。「キモい」というのはあくまで感情でしかないからだ。発言することも場を選べば問題ないと思う。

しかしそれらの嗜好を理由に、職場や学校で社会的制裁を与えたり、評価に差をつけたりすることは差別だと考える。

男性陰謀論は同意できない

"男性陰謀論"というのは自分が今作った言葉だ。まず以下の点が前提となるが、これは同意できる。

  • 現代の社会においては男性のほうが社会的影響力が大きい
  • 人の考えは社会的に後天的にきまる部分が多い

ここから何故か男性陰謀論者はこのように論理が進む。

  • 男性の全ての考えは男性優位な社会を築くためであり誤っている
  • 誤っていることに男性は自身で気が付かないので、男性は正しく判断することができない
  • 女性が自発的に行った結果が男女同じ結果を招かないならば、それは全て男性に騙された結果である
  • そのため社会の問題のあらゆる原因は男性にある

もちろんいずれの点も部分的にはあてはまる部分はあるだろう。しかし"全て"ではない。どの程度影響があるのかは事例ごとに個別に検証が必要だろう。

これも上記のように直接言う人はさすがにいない。しかしながら主張の論理を読み解いていくと、結局上記のような論理になることがある。

これの厄介なところは、上記の論理を前向きっぽい文脈で言うと、いいこと言って論破した感があることである。こういう論理的に反論不可能な論理で論破するのを自分は「絶対論理」と呼んでいる。

例えばこのようなものである。どこかで見たような言葉だが、全て結果から過程を逆に定義しているので、論理的に反論できない。だからといってこれらが正しいわけでもない。単なる議論に勝つための論理でしかない。

  • できないは嘘つきの言葉である
  • 成功するには成功するまでやり続けること
  • あなたの現在はあなたがそうしたいと思った結果だ

男性陰謀論に戻ると"男性は全て誤っている"から始まっているので、男性との間では論理的に議論が成立しない。女性だけのコミュニティの間で盛り上がるだけならいいだろうが、現実的な男女格差解消のためには男性との対話は当然必要だ。そのためには何の助けにもならない。

男女というのは簡単には変えられないアイデンティティであり、自分とは異なるアイデンティティの社会的影響力を増大する立場になるのは誰であれ難しい。

ただそれでも、原理主義的な極論をさけて、現実的な改善案を作る試みは行っていくべきだという点は同意する。