機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX上映

今観ても傑作だと思う。押井守で一番好きなのはやはりこの作品かも。

劇場公開時に観ていて、その後も何度かレンタルで観ている作品。4DX版の上映ということで、映画館で観るいい機会なので再度観てみた。10年ぶりくらいに観たかも。

機動警察パトレイバー the Movie 4DX上映 - yamak's diary については以前書いたが、P1ほどの自分の人生と並べた感慨深さのようなものはない。しかしこの作品自体がよく予言的であると言われるように、その後の社会に照らし合わせた感慨は強い。

中東を中心とする先進国以外の「戦争」を平和ボケした先進国に知らしめるためのテロは、9.11以降当たり前のものとなった。

柘植の関心は戦争が起きている他国の社会状況そのものではなく、日本のPKOでの火器の使用等における制限の非現実さに向いている。それは日本のPKO法が1992年で映画が1993年という時代状況によるが、今の視点から見ると主張としては生ぬるく見える部分もあるだろう。


この作品における最大のクライマックスはやはり新宿に自衛隊が展開するシーンだろう。ここにおけるポイントは、自衛隊がテロ組織や他国や未知の侵略者と戦うために展開しているわけではないということだと思う。

もちろんテロに備えるのが表向きの理由ではあるが、政府が警察と自衛隊のどっちを信頼するかという話があって、外部からは何故なのかいまいちわからない。そのよくわからないが軍隊が展開されるというところが、むしろ内戦状態のリアリティであり怖さなのだと思う。

1993年は冷戦終了後で民主主義の勝利が信じられ、民主主義こそが経済成長をもたらすと誰もが信じていた。しかしながら、その後は民主主義は経済成長をもたらさず、世界も日本も右傾化した。

戦車に乗って喜ぶ東京都知事が現実にいたくらいなのだから、何かあったら自衛隊のほうを重視する政府になってもおかしくないだろう。


そういう青臭い話を何も書かないわけにもいかない作品ではあるが、単純に映画として非常に良くできていると思う。

兵器の描写が強烈すぎて埋もれがちだが、最後の特車二課としての人物描写は良い部分が多い。後藤さんと南雲さんの微妙な関係の描き方、野明の「いつまでもレイバーの好きな女の子じゃない」というセリフもいい。太田だけは全く変わらんようだが。

最後にどうでもいい話であるが、この作品を観ると、昔の押井守好きの友人が、この作品は一点だけ評価できないと言っていたのを思い出す。彼は南雲隊長の大ファンだったのだ。熊耳さん好きの自分が漫画版終盤でどんな気持ちになったかわかったか。