美男におわす

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イケメン好きでも全然いいんじゃないですかね。自分も美少女好きだし。埼玉県立近代美術館

別にイケメンの魅力に目覚めたわけではないが、単に面白い視点の展覧会なので行ってみた。

"美男"を扱うにあたり、女性から見たイケメンと男性から観た衆道的な意味での美少年は違う。江戸より前だとそもそも女性の視点というのが存在しないので、衆道的な意味での美少年がメインとなる。

絵画ではないが、歌舞伎の起源の女歌舞伎と若衆歌舞伎の話が興味深かった。女歌舞伎が禁止されたから美少年に女性の格好をさせた若衆歌舞伎が始まり、それも禁止されたから普通に男性がカッコいい役をやる物語重視の歌舞伎になったとか。

いつの世も男性はアイドルグループ好きなんだなと。まあ実際は風俗の顔見せ的な意味があったからだろうけど。現代でも女性アイドルが禁止されたら男の娘アイドル時代になるのだろうか。

江戸時代の浮世絵から現代美術や漫画までをボーダーレスに扱うのは面白い。舟越桂とかその文脈で扱うのはどうなの的に思った部分もあったが、解説もしっかりしていて良かった。最後にJUNEを持ってきたのはうまいと思う。

現代作家ではやはり木村了子のインパクトが凄い。以前にも以下で同じことを書いていたが、これまでなかった女性の欲望としての"イケメン"を、日本画という文脈にもってきたのは凄い。
イケメン屏風の衝撃 - yamak's diary


昨今は公の場で外見を評価する発言をしてはいけないルールとなってきている。外見ではなく人格や能力を判断すべきと。もちろん業務では必要だろうし、学校で教師がそのような発言をしたら問題だろう。

一方でポスターのような一枚絵の表現の場合にイケメンや美少女であるから人格がないという考えも難しいものがあるように思う。"不細工だからいい人"という考えも外見で人格を判断していることは変わらない。

またアイドルや役者を"人格で判断する"というのも自分は理解できない。我々が見ているのは役やパブリックイメージの疑似人格でしかない。インタビューやプライベート風映像も疑似人格に過ぎない。

外見を楽しむのはそれはそれであっていい。一方で実際の価値が人格や能力に依存するものはそこで判断する。その辺をうまくバランスを取って両方認めていかないと、建前と本音の乖離が余計拡大するような気がしてならない。