たまこまーけっと

"たまこまーけっと"は人情喜劇の形を借りた日常系なのだと思う。

"日常系"に物語形式で近いのは"人情喜劇"なのではと思っている。どちらも勝ち負けを基準とした大きな物語ではなく、日常の小さな物語を志向している。基本がコメディである点も似ている。

一方で自分は"人情喜劇"が苦手だ。"たまこまーけっと"は知ってはいたが長らく観ていなかったのは、フォーマットが"人情喜劇"に近いからだった。

"人情喜劇"はかつて弱者のための物語を志向した形式なのだと思う。強者と弱者を分ける基準を経済力において、弱者であっても持っているものを家族や隣人としたうえで、日常生活における家族や隣人の大切さを軸に話を作ることで弱者のための物語になっていた。

しかし現在においては事情が変わってしまった。家族の中でも特に結婚は強者と弱者を分ける基準になってしまった。結果として人情喜劇は弱者に対する抑圧として機能するようになった。

"日常系"は弱者の物語を志向するために、そこから結婚につながる恋愛要素を抜いた。隣人も今では誰もが持つものではないので、誰もが共通体験として共有できる学校を舞台にした。"日常系"にはそういう意味があると考えている。

"たまこまーけっと"は商店街という隣人も家族も恋愛も入っている。だから人情喜劇のフォーマットに近いけれども、かなり注意して人情喜劇の押しつけがましさを排除している。特に恋愛に対しては日常系ほどタブー視はしないけれども、そこが最も重要というわけでもない。

その上でメイン3人の女の子の可愛さはすばらしい。たまこも可愛いけどみどりちゃんがヤバい。かんなちゃんはおっとり系ボケということで普通の作品なら推しになるはずが、あとの2人がレベルが高すぎて霞んでしまう。

デラちゃんについて面白いのは、通常の物語であれば異邦人であるデラちゃんが来ることで周りの人々に何か変化がおきるはずなのだが、小さな物語の進行役にはなる一方で、特に大きな変化が起きるわけではないという点だと思う。

ネットを見ると上記の点からデラちゃんがそもそも物語に必要なのかという意見もあるようだ。しかしデラちゃんが一人ボケとして毎回活躍してくれたからこそ、本作は他の登場人物が無理に笑いに走る必要なく、全体としてはコメディとしていい塩梅になっている。

実は"たまこラブストーリー"はまだ観ずにこの感想を書いている。そのうち観るとは思うけれども、正直ちょっと観るのが憂鬱だったりする。