しがみつかない生き方

成功者にも哲学者にもなれない人はこう考えるしかないんじゃないかな。

ずいぶん昔に買った本なのですが、なんとなく読み返してみました。こういう自己啓発的な本はすぐ捨ててしまうことが多いのですが、何故か捨てずにもっていました

香山リカさんは最近はあまり聞かなくなりましたが、メディアに良く出ていたからかネットではかなり叩かれがち人ですね。自分は90年代のファミ通時代から読んでいるのもあり、この人嫌いじゃないんですよ。単に眼鏡女子好きなのもあるかもしれんけど。

自己啓発書を書く人は大きく2種類いる気がするんです。1つは成功者、この本で言う勝間和代みたいな人で、努力して社会的成功を勝ち取ったタイプ。もう一人は哲学者、宗教者も含む、特別な論理を持つ人ですね。

自分は自己啓発書に感動することが全くないんですよね。文化としての宗教自体には興味があるのですが、宗教者の書く文章は嫌いです。どんなに優しい言葉で書いてあっても、彼らはあくまで上から目線で物を言いますよね。

この本のサブタイトルだけを見ると、「お金にしがみつかない」とか「生まれた意味を問わない」とか哲学者の書く自己啓発本に近いものがある。ただ、展開されるのは論理というより「そう思わないとやってられない」という諦めに近いものがある。

これは精神科医という職業に特殊な考えなのかと思います。毎日他人から見るとそこまで大きな悩みでもないことに過剰に悩む人ばかり相手にしている。彼らは特別に悪いことをしたわけではない。

そのやるせなさの中で、彼らを縛る世間の常識に対し、屁理屈と言われようと一旦そこから距離を置いてみるよう言いたいという、論理以前の気持ちの強さを感じます。

そういうやさしさから来る諦観のようなもの。そういうものくらいしか、成功者にも哲学者にもなれない自分を繋ぎとめられるものはないのではないかと思っています。