紡ぐ乙女と大正の月

歴史日常系と思っていたら、ラストの物語がが神がかってました。

"紡ぐ乙女と大正の月"の最終巻を読み終わりました。最終巻なのは知っていたのですが、正直全く予想外に凄い物語の組み方で衝撃でした。ネタバレしないとこの凄さを語れないのでネタバレありです。




















"紡ぐ乙女と大正の月"ことつむつきですが、1巻で好きになったのはもう単純に大正女学生が可愛いからですね。着物は好きなんですけど、江戸まで遡ると髪型が可愛くない。髪型が洋風で服が和服というのが最高に可愛いですよね。

あと自分にとってはコメディ部分がちゃんと笑えることが重要で、そこもちゃんと面白かった。

良く言われる歴史考証がしっかりしている点ですが、歴史ネタをちゃんと面白さに繋げてくる部分は非常に素晴らしいと思ってました。飲酒ネタはアニメ化されたら削られるのではと余計な心配してしまいましたが。


今のきららにおいては大きな物語の流れも重要視されるのですが、正直3巻まではその点においては本作はそこまででもないかなと思っていました。自分は女の子が可愛くてコメディとして面白いことのほうが重要なのであまり気にしてませんでしたが。

3巻の最後の唯月の告白もあまり深刻に考えていなかったです。それというのも2巻のラストの原首相暗殺が、3巻では結構あっさりした影響しかこの話には与えなかったからですね。次の巻の引きのために思わせぶりなイベントを入れただけなのかなと。

今になって思えば、それはラブコメが最終展開に入るためのイベントだったのだとわかります。ラブコメというのは本気の告白でメインのカップルが付き合ってしまうと、それは最終展開なんですよ。


本当に凄いのはここからでした。この後は1話たりとも無駄な回がないんですね。七瀬の話はもちろん、少女雑誌の話は写真の話、お祭りに行くのは結婚相手の前振り。誕生日は鈴、硯の話は結婚の話を打ち明けと、日常展開に絡めて最後のためのイベントを着実に入れてくる。

雪佳ちゃんがデレる話は別になくても構わないんですが、まあ観たいですよね。盗撮助平ジジイとかサービスも過剰なくらい徹底してるのがいいですね。

一番凄いのは、関東大震災で紡が現代に帰るのではないかと読者にミスリードさせたことだと思います。地震によってタイムリープしたという話と、関東大震災の話は本文でも出てくるので容易に結びつきます。震災で唯月が危うくなるであろうことも事前に写真でわかる。

だから震災の前に脚立から落ちただけで紡が現代に帰る展開が衝撃だった。読んでて声が出ました。冷静に考えると現代から戻って来るのがちょうど関東大震災のタイミングなのは都合いい気もしますが、そんなことは気にならないくらいその後の展開も素晴らしかった。

紡と唯月の別れがアレであるのも、ここまでの積み上げがあったからこその感動があります。"紡さん おめでとうございます"が初回はよくわからなかったのですが、これ紡が産まれた日なんですね。このころ唯月はもう97歳です。


改めて全体の流れをみると、実は定番の展開を外した部分というのはないのです。

重要人物がラスト前にいなくなるというのも定番ですし、そこからパートナーを助けるために戻って来るのも定番です。朝にいなくなっているのも定番。タイムリープものとしては最後は本来の歴史の流れに戻るのも定番ですし、最後にリアルな時間を超えて受け継がれるのも定番です。

凄いのはこの定番の全てが、この物語に対してこうするのがベストであるという展開になっていることなんですよね。

久しぶりに凄い物語を読んだと思いました。たぶん最後の大まかな流れはかなり初期から用意されていて、3巻の中盤時点でもう4巻で終わらせることを前提に話が作られていたのだろうなあと。

大変良い漫画だったと思います。ありがとうございました。