メタリックルージュ

キャラクターも世界観も良い女子バディものSF。メインテーマの扱いが最後はっきりしなかった点は惜しい。メインテーマの話をするには最後のネタバレが必須なのでネタバレありで書く。









正直観る前はあまり期待してなかったのだが、観るとかなり好きなタイプの作品だった。古参SFの匂いが強いが、出渕さんだし世代的にしょうがないよね感。これくらいが50代のおっさんが観るにはちょうどいい。

人間に隷属させられるアンドロイドが反乱を起こそうとするというお約束すぎる展開。普通過ぎて何か別のテーマがあるのではと思ったが、結局そのまんまだった。

それでも楽しく観られたのはルジュとナオミのバディものとしての良さがあるから。リコリコもそうだったけどバディものはとにかく会話の面白さが重要だと思っていて、その点は安心して楽しめた。

あとルジュが可愛い。前髪パッツンで黒髪ロングの時点でもう強い。見た目に対して精神年齢が幼いというのは昨今では非難もあるだろうが、自分の意志が希薄であるという点はテーマにも関わるので単に男性に媚びたわけではない。逆にナオミは男性ウケする方向ではないのでここでバランスを取っている感じ。

メイン以外のキャラクターや背景やメカデザインもいずれも凝っている。変身バトル物なので、変身後のフォームもあるのだが、正直自分はあまり刺さる感じではなかった。バトルについては各キャラに特性があるのだが、時間の関係もあり理解できないうちになんとなく終わっていた。

物語は無理に広げずに、イモータルナインと2人の博士とルジュを巡る話にしたのは良かったと思う。人形遣いの正体の謎解きも良かった。それなりに重い話のはずだけど、シアンの突然の妹展開などコメディ部分も結構あったのがよかった。


一方でどうしても気になったのは、この物語のメインテーマであるアシモフコードの解除を巡る話だ。

途中でジーンはアシモフコードの解除に対して社会の混乱を懸念して反対している。ルジュは最初は解除を支持していたものの、最終的にはジーンに従ってネアン開放を阻止する側につく。

しかし最後ではそのジーンの主張のことはすっかり忘れ去られて、ルジュはアシモフコードを解除する。そこはジーンのシーンがないのでジーンがどう言ったのかはわからないが、ジーンが認めない限りはルジュはこの結末は選ばないだろう。

確かにこの物語においてはアシモフコードを解除するのが、当然あるべき正しい結末だと思う。ではなぜ途中で反対する方向にしたのか。

アルターには独立を扇動する目的があったので、アルターによる解除は阻止すべきで、自分達による解除は問題ないというのは一定の理解はできるが、エゴイスティックな解釈にも思える。ルジュのイドを取り出しても問題ない状態にできたからというのもあるが、それは結果論のような気がする。

自分は途中でルジュがあれだけネアンの悲劇的な立場を見た上で、ネアン開放を阻止する側に回ったことにかなり違和感があった。そこを結局覆すのであれば、そこには一定の説明があるべきだったのはないかと思った。


とはいえ全体的には楽しめる話だった。女子バディものはいい。