話を大きく変えてもテーマを変えないことで成功したことが凄い。
本作でメインで扱われている90年代美少女ゲームと自分との関係を書いておくと、自分はこの頃の有名ゲームはほとんどやっていない。しかし当時仲の良かった友人が好きで、彼が本作でもでてくる有名ゲームの話を良くしていたので、タイトルも知っているし、当時どういう盛り上がりだったかもなんとなくは知っている。
自分が当時やらなかった理由はエロに興味がなかったわけではなく、当時の盛り上がりがエロとは異なった方向だったからだ。泣ける恋愛物語に自分は興味がなかった。当時の有名作品は今はアニメでいろいろ観られるけど、正直今も興味がない。
しかし実は単純にエロ目的での美少女ゲームはその後買うようになった。エロではない美少女ゲームはアドベンチャーゲームがあまり好きでないのでやっていない。美少女は好きなのでアニメや漫画は観るが。
本作に話を戻すと、アニメで初めて知って、原作はあとから読んだ。最初からインタビューなどを読んでいたので、原作はSFではないというのは知っていた。原作はどちらかというとNEW GAME!!のような仕事ものに近い。これはこれで好きなのだけれど、アニメ化をそのままするにはいろいろ問題があったのだろうとは思う。
個人的にはメイ子がエロ絵を描きたくないにも関わらず、描けと言われるところに今の公共の電波だと危うい部分を感じた。コノハのように主体的に美少女ゲームが好きなら問題ないのだけれど。まあ個人的には原作のメイ子は好きなので、アニメでもっとメイ子を見たかった感はある。
そこからの原作者のアクロバットが凄くて、本作はタイムリープ物のSFになってしまった。これによって以下の問題を解決しようとしたのだと思う。
- 現代の若者が感情移入しやすいキャラクターと視点が導入できる
- 現代であればエロゲと美少女ゲームの間には明確な差があるので、倫理的な問題を回避しやすくなる
- 完結していない原作という問題を回避でき、アニメ版だけで綺麗に終わらせることができる
- 現実のモデルとなる人物との距離を遠くできる
しかしこの時にテーマは変えなかった。本作のテーマを自分なりに考えると、90年代美少女ゲームを通した、文化の発展と継承があるのではないか。
それは意図して行われたわけでは別になくて、結果的にそうなったにすぎないのだけれど、エロという金の集まる部分に集まった才能が結果的に文化を成熟させていく過程。これはもちろんゲームだけでなくて漫画でも映画でも起きた話だけれど、それを描きたかったのだと思う。
そして歴史の影響というテーマをタイムリープという形式では非常に直接的に扱うことができる。本作10話からはまさにそれを扱った展開になっている。
正直ストレートすぎる感じもするが、大風呂敷を広げたあげくテーマがわからなくなった水星の魔女という作品が今年あったことを考えると、これくらい一貫しているほうが好感が持てる。
SF部分については、そもそものタイムリープの説明が十分ではないとか、エコーは結局何だったのかという部分はある。設定的にはちゃんとありそうだけれど、あえて全てを説明していない感がある。また絵面は現実パートよりSFパートの方がはるかに地味だったのは否定できない。
10-12話のSF展開のやりたいことはわかるんだけど、このまま微妙な終わり方だったらどうしよう的な懸念に対して、13話の怒涛の展開でハッピーエンドになったのは本当に良かった。ベタではあるけど最後の98起動音は感動した。伏線も綺麗に張ってある。
あとは単純におっさんホイホイのコメディとしても大変よくできている。自分は98ユーザーではなくてMSXからWindowsに移ったのだが、98は憧れの機種だったのでネタはだいたいわかる。98のコスプレには大爆笑した。個人的にはワープロ風次回予告が好き。
いろいろ面白い作品だし、実のところエロくもない作品なのだが、人に勧められるかというと勧めづらいのも確か。でもインターネット老人会の皆さんは是非見て欲しいと思う。