楽しいという意味では今年一番かも。
本作の何がいいって、まずは全幕バレエの完全新作ということですね。バレエの新作って小品はあるけど、全幕ものって残念ながらほとんどないです。さすがロイヤルは振付家の層が違うなあと思ったら、ロイヤルとしても15年ぶりなんだそうです。
もちろん古典は古典で良さがありますし、同じ演目を異なったバレエ団がすることを比較することが好きという人もいるでしょう。でもバレエって、現在まで伝わっている演目のレパートリーはたかだか200年分しかないんですよ。美術や音楽等、他の芸術に比べたら圧倒的に新しい芸術なわけです。
ダンスという意味では他にもいろいろな新しい形がありますが、全幕バレエという形ももっといろいろ可能性がある形式だと思うし、新しいものもできて欲しいですね。まあものすごく大変だと思いますが。
そして単に新しいだけではなく、演出と美術、そして脚色も非常に良かったと思います。全体的にはノリとしてミュージカルぽいんですよね。いい意味で。
いわゆる「物語的」といわれる英国バレエの伝統を裏切ることない演出と美術。プロジェクションは使いすぎると興ざめする部分もあるのですが、ポイントをうまく絞れていました。アリスが大きくなったり小さくなったりするところは、どうするのかと思いましたがうまいですね。あとチェシャ猫が面白すぎです。
脚色については、実は原作ちゃんと読んでなくて、あらすじだけ把握して観たのですが、あのどうにもオチのない話をよくバレエとしてキレイにまとめたと思います。裁判をそういう形でクライマックスにするのかと。プロローグもパンフ観ないとわかんないですが、非常にうまく後の話と結んであります。
もちろん、演劇ではなくてバレエですからその意味でも文句なしの出来でした。ここが文としておざなりなのは、技術とかよくわからんからです。すいません。
こんなこと言うのもどうかと思いますが、バレエって興味ない人が1回見る分には「ああこういうものなのね」ってそれなりに満足すると思いますが、また観たいとは思わない。女性はとにかく、子供や男性の興味を引くにはなかなか難しい部分もあると思います。ストイックなのもいいんですが、もう少しキャッチーな楽しさがあってもいいんじゃないかという気もしますね。