おにぱん!

"明日ちゃんのセーラー服"とはまた異なる日常系アニメの映像の可能性を広げてくれた作品。

日常系アニメというのは映像的には地味になりがちだ。そもそも物語に大きなドラマがない。バトルもライブもスポーツも基本的にはない。設定によって多少はあったりするが、毎回そこで盛り上がるという話の定番的なリズムに載せることが難しい。

"明日ちゃんのセーラー服"の凄いところはその上で、"女子中学生"そのものを映像的に丁寧に描くことで、日常の枠の中で映像的な可能性を追求したことだと思う。一方でその過剰なフェチズムは一般的には受け入られないというのも事実だろう。

"おにぱん!"の放映枠は朝の子供向け番組なのでエロに頼る手法は使えない。しかし映像的な定番の見せ場がないと特に子供は飽きてしまう。そのうえであくまで"日常系"でありたい。その難題に立ち向かったのが"おにぱん!"だったと思う。

スタッフは監督:太田雅彦、シリーズ構成:あおしまたかしという日常系アニメ界のスターコンビ。思えば太田監督は以前からこの課題に挑戦的に取り組んでいた。

ゆるゆりの「あっかりーん」で始まるアバン、みなみけのマジ目演出、さばげぶっ!サバゲシーン、恋愛ラボのTo Be Continued等。

原作にはない演出を、原作の良さを損ねない程度に加えることで、アニメならではの演出可能性を試み、定番のリズムに載せることが意図されていたように思う。

"おにぱん!"の場合はオリジナル作品なので、原作に気兼ねすることなくシナリオの段階で入れることができる。その際に取った手法が "おにぱん"は見た目だけは変身させることができるが、能力は上がらないという設定であった。あくまで見た目で気合を入れる感じである

だから映像的な山はおにぱん変身シーンで作る一方で、実際に解決しようとする課題は毎回全く異なる。これにより映像的なネタのバラエティを作ることができた。

とはいえ鬼はもともと身体能力が人間よりかなり高いという設定もあり、実際にはおにぱんの力で能力が上がったように見える部分もなくはない。そこは細かく突っ込まないでおこう。

面白いのが映像的な山がおにぱん以外であるという6話ののりりん回。この回はこれまでのおにぱんのお約束にツッコみまくるメタ回でありながらも、最後ののりりんライブが盛り上がるという最高の回だった。個人的にはベスト回だと思う。

映像の話だけしてきたが、鬼っ子三人も非常にかわいい。エロはない一方で、過剰に女性への配慮を行ったキャラクターデザインというわけでもない。桃ちゃんのつなぎが変にエロく見えるのにちょっと戸惑ったくらいである。

ギャグも面白いけど、ミスター味っ子とかウルトラクイズとか90年代ぽいノリが強くて子供はついていけるのか若干心配になる。でも妖怪ウォッチとかもその辺容赦ないらしいので大丈夫なんだろう。

朝の毎日こま切れ放送ということで、きらら民にもほとんど無視されていたように思うが、太田監督好きであればぜひ配信サイトで観て欲しい。