"映画 ゆるキャン△"が取らなかった選択

映画 ゆるキャン△のネタバレ有り感想です。
















"映画 ゆるキャン△"はハッピーエンドではあるが、どこかすっきりしない部分が残った。それは"しまりんが今の会社をやめて、新キャンプ場の管理人になる"という選択を心のどこかで期待していたからではないかと思う。

大人になったみんなの仕事の中で、しまりんだけが違和感がある。なでしことしまりんは逆なのではと多くの人が思うのではないだろうか。

しまりんの仕事は地方タウン誌の企画。とはいえ最初から企画だったわけではなく、以前は営業だったらしい。小さな出版社に最初から営業志望で入る人がいるとは思えないので、企画志望で入っても最初は営業なのだと思う。それ自体はかなり現実味のある設定で違和感はない。

最初のしまりんの会社のシーンがキツい。しまりんの性格から営業にはあまり向いていなかっただろうなあとか、しまりんが向いてなさそうなおしゃれスイーツ企画を出して没にされるところとか。

タウン誌編集は昔は地方ではかなり人気の職種だったので、もちろんやりたいことがあって入ったのだろうが、なかなか厳しい。

自分は後半から、このキャンプ場の管理人がだれになるのかがかなり気になっていた。イヌ子の学校が廃校になる気配は先生が出たときに話していたので、イヌ子がやるのかと思ったがそうではなかった。

最後で全員が管理人のようなことをやってはいたものの、管理人を選任でやるには今の会社をやめなくてはならない。そんな話は全くなかった。彼女らがやっていたのはあくまで仮で、正式な管理人は別に入ることになるのだろう。

やるとするなら話の流れ的には、最も仕事に対して違和感のあったしまりんだろう。しかしその選択は取らなかった。これこそがむしろこの映画で重要なのではないか。

キャンプ場の管理人はゆるキャンにとっては完全に「中の人」だ。しまりんも憧れはあるのではないか。

とはいえ観客の多くは自身の仕事が別にあったうえで、アニメを観たり、キャンプに行ったりするのだ。しまりんが「中の人」になってしまうと、物語的には綺麗に収まる一方で、しまりんは観客から離れてしまう。

もちろんやりたいことに対して勇気を出して一歩踏み出すことは重要だ。一方で日常系とはあくまで日常に踏みとどまりながらも、その中でも細やかな楽しみを見つけていくことなのだと思う。

しまりんが自らの仕事で頑張ることを選択したのは、たぶんそういうことなのだ。