オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件
- 作者:中山 淳雄
- 発売日: 2019/11/14
- メディア: 単行本
アニメやゲームの海外展開の話がメインです。著者が実際にバンダイナムコとブシロードで海外展開の現場で長くやっている人でありながら、ビジネススクールの非常勤講師もされているので、説得力がありながらも、ある程度中立性をもってわかりやすくまとめられているのがポイントです。図表だけ見ても大変面白いものが多い。
また海外展開の話の前知識として、そもそもの日本のマンガ、アニメ、ゲーム等の産業の歴史も知る必要があるので、その点についても非常によくまとまっています。
現職がブシロードということで、ソシャゲの話でガチャに全く触れていない、ラブライブとバンドリの話は多いのに、アイマスの話が全くないなど、ブシロード推しが強すぎる気はしないでもないですが、その点を少し割り引いても読む価値はあるのではと思います。
IPを継続的に売るためには、アニメやコンソールゲームという一過性のコンテンツだけでは継続して興味を持たせるには不十分である。メインコンテンツ間に興味を維持させるための商材として、継続的に運営できるソーシャルゲームや、比較的短期間で実施可能なアイドルとしての声優のライブがあるというのは、ビジネスの方法としては非常に納得感がありました。
また第五章の日本とアメリカのマネージャーの役割の比較はアニメやゲームとも関係なく面白かったです。自分はこれを読んで開発手法であるスクラムのスクラムマスターの話を思いました。自分もそうですが、日本人にとってスクラムマスターとチームリーダーの違いがあまりよくわからない。理由はここで言うところのマネージャーの役割に近い部分があるように思います。
少し気になったのは、日本のクリエーターの"やりがい搾取"とも言われる悪い労働環境から産まれる、高いクオリティの作品が、結果として他国が追従できない価格競争力の高さになっているという点。確かに産業としての利点ではあるでしょうが、それを素直に良しとしていいのかは難しい感じがします。
また出版としてのマンガは確かにアニメと比べると衰退産業だと思いますが、今でもほとんどのアニメはマンガを原作としていることを考えると、そこが衰退してしまうとアニメ産業も継続が難しくなるように思います。特に中小の出版社にどうアニメからお金を回すかは考える必要があるのかと。芳文社とかね。
自分は日常系のアニメや漫画が好きなんですが、日常系というのは金の回しにくい分野だなと思いますね。戦わないのでソシャゲにもできないし、パチンコにはむしろなって欲しくない。声優ライブのために本編にないキャラクターソングを作るのは人気コンテンツでは結構ありますが、少し無理のある展開だとは思います。コラボカフェとかもありますが、ソシャゲやライブほどの集金力はとてもないわけです。
そんな理由なのか最近はアニメの本数自体は増えたものの、日常系アニメは以前より作られなくなったように思います。ゆるキャン△のヒットもあって、リアルコンテンツとの連動がしやすい作品のほうが、ライブ化に結びつきやすく、アニメ化は少しされやすいように思いますが。まあむしろブームのころが異常で、今のほうが普通なのかもしれないです。