ガーリッシュ ナンバー

ガーリッシュ ナンバー観終わりました。すごく面白いアニメだった。いろいろ書きたいことがあるのですが、3つの点で書いてみます。

クズな自分と向き合え

このアニメはとにかくちーさまがかわいいんですよ。ちーさま見た目はかわいいけど、口は悪いし、努力嫌いだし、すぐに他人のせいにする。自信過剰で自分がトップでないと気に食わない割に、人の評価はものすごく気にして凹む。まあクズなんですけど、そこまでは結構ありがちじゃないですか。

面白いのはちーさまのこの性格は何のメリットにもならないのですよ。普通こういう話だと、性格は悪いけど破天荒な奴が、既成概念を打ち破って問題を解決したり、コミュ力お化けで現場の空気を変えたり、3話くらいで大きな挫折を味わって改心したりするじゃないですか。そういうのがないんです。

最初のエピソードは確かに「既成概念を打ち破って問題を解決」したし、最終話付近では挫折によって少しは改心します。でもメインとなる中間部分では、ちーさまは努力しないので普通に同期に抜かれていきます。最後も挫折というほどの挫折もなくて、単に大げさに凹むだけなんですよ。

そして興味深いのはもう一方のクズである九頭Pです。彼もまあ調子だけはいいけど責任は他人に押し付けるクズで、過去の信頼を食いつぶして生きている男です。

自分も含めて視聴者の多くは、ちーさまに対しては「かわいい」と思って、九頭Pに対しては「さっさとやめさせればいいのに」と思うのではないかと思います。やってることはたいして変わらないのに。

それは現実における九頭Pのような「ダメな自分」を「かわいい女の子」の姿に仮託することで甘やかしたいということでしかないのではないか。それを意識させる構造を意図的に作っているのではないかと思うわけです。

努力なんか自分のためでいい

ちーさまは「みんなのためになんて頑張れない」と言います。自分はちーさまほど一番になりたいとは思わないけれど、他人を幸せにすることをモチベーションにすることが全くできないことはすごく共感できます。

正直「仲間のため」とか「ファンのため」とか言うのを聞くと凄く胡散臭く感じる。まあそういう人もいるんだろうし、いないと困ると思うけど、自分は全くそう思えないんです。

何でもそうだと思うけど、それなりに上達する、ましてやそれでお金をもらうレベルまで上達するために努力することは辛い事しかない。いや私は好きなことだから楽しいという人もいると思うし、それは素晴らしいことだと思うけど、ほとんどの人はそんなことないのではと思っています。

そんなこと言っても生き残るために努力はそれなりにしなくてはならない。そのモチベーションなんか自分勝手でいい。他人に迷惑かけるのは問題ですが、そうでなければ綺麗ごとなんか糞くらえでいいと思います。

兄妹もののズルさ

自分は妹が実際にいるので、妹に対する過剰な幻想みたいなものはないんですが、兄妹設定というのはこういう使い方ができるんだなというのも個人的には興味深かったです。

若干ネタバレになりますが、ちーさまが挫折から立ち直るときに、マネージャーでもある兄がキーになります。この役は原作者がラノベ作家だから兄になったと思っていて、日常系漫画原作だったら同僚の女性声優になったと思うんですよね。

これ兄妹じゃなかったら男女だと恋愛展開にならざるを得ない。ただそうなってしまうと、女性声優の恋愛という視聴者があまり見たくないであろう展開になってしまう。

このアニメ内のアニメ、クースレですが、ハーレム物のはずなのに主人公の男性声優が一回も出なかった。そこはかなり気を使ったんだろうなと思いますね。

その一方で唯一の心を許せる存在を視聴者が感情移入しやすい男性にしたいという要求はあって、そういう意味で兄妹設定というのは便利なんだなと思いました。個人的にはそこは女性声優で良かったのではと思うんですが、文化の違いなんでしょうね。

普通にコメディです

自分のちーさまへの愛が深すぎて、それを表現するには自分はちーさま並みに性格が歪んでいるのでこんな文章になってしまいましたが、本作は普通にコメディです。まあかなりアニメオタク向けのコンテキストの強いブラックコメディですけど。

一方で仕事物として普通にいい話も結構あって、万葉と百花の話とかいい話だなと思うし、八重と京の同期コンビも本当にいい子だなあと。ちーさまが別格ではありますが、他の女の子もみな可愛くて、個性のない子がいないのがいいです。

女の子の沢山出てくる深夜アニメが好きなら、間違いなく観て楽しいと思いますよ。