NEW GAME! 漫画版

真っ当な仕事ものとして普通に素晴らしい作品。

NEW GAME! 漫画版を全13巻読み終わりました。アニメ版1期2期のほうを先に観てから読み始めましたが、アニメ版2期の話以降もダレることなく面白く読み終わることができました。

きらら作品ということもあり、こんな女性と男性で完全にチームを分ける会社がおかしいとか、それなりに人数いる会社だし、ここまで新人に任せないだろとかもありますが、全体としては至って真っ当な、いい意味で熱い仕事漫画だったと思います。

本作はゲーム業界を舞台とした仕事漫画なのですが、意図的に仕事漫画の定番を外している部分があるように思います。それは「業界知識ネタに頼らない」という点です。これはあとがきで作者も言われていたように思います。

「業界知識ネタ」というのは、その業界特有の知識をもって問題を解決することで、物語そのものの進行と、読者にとっての知識欲を満たすという手法で、仕事ものでは定番のやりかただと思います。

ただこれについては特にゲーム業界のような進化の速い業界の場合にネタが古くなってしまったり、説明が多くなることで4コマでは扱いにくい問題があります。

本作でもそういう業界知識部分はありますが、それはあくまでそれがないと話が進まないから入れている部分であって、それが物語の中心のネタになっているわけではないことがポイントです。

またこれもよく仕事ものである、型破りなヒーロー社員が常識を破って問題解決するような展開もありません。コウも青葉も紅葉も新卒から大抜擢されるという意味では型破りですが、いずれもコンペという正当な評価の場で選ばれます。

物語の中心になるのは業界や人物の特殊性よりも、先輩と後輩の関係、いい意味でのライバル関係、仕事に対する心構え、適性を生かした人事という、どんな仕事でも一般的な話です。お金の話も多くはないですが出ます。そういう部分が広く仕事を問わずに共感を呼ぶのだと思います。

特にコウ、青葉、紅葉、そしてほたるんの4人のキャラクターデザイナを巡る話は師弟や友人がライバルでもあるという、王道の燃える展開で、本当に素晴らしい構成だったと思います。


正直自分自身は仕事というものに対して、彼女らほどの情熱を持っているわけではありません。だからといっていいかげんに仕事をしているわけではないと自分では思っています。

本作だとひふみんやゆんが比較的その立場に近いかもしれないです。そこに対しても一方的に情熱を押し付けるわけではなく、その立場なりの立ち位置が用意されているのが、本作の良さではないかと思います。


一方できらららしいギャグ展開や、コウとリンの百合、結構攻めた感じの扉絵など、ガチな部分とゆるい部分のバランスが非常によくできています。そのため重すぎて疲れるということもあまりありません。

アニメ版の感想と同じことを言ってる気がしますが、アニメ版がそもそも良くできているので、まずはアニメ版から観て、気に入ったらコミックスを買えば確実に満足できる作品だと思います。