プリマドール

ベタに泣かせるアニメだけどそこがいい。

よくある設定ではあるんですよ。元々戦争のための機械が戦争が終わった後で自身の新たな役割を見つけていくが、戦争の影に巻き込まれていくという。あえていうなら萌えに振り切ったヴァイオレット・エヴァーガーデン

とはいえこの手に作品でどうしても逃れられないのが、戦争というものに真面目に向き合おうとすればするほど、"美少女"部分がリアリティがなくなってくる。

本作はこの点がかなり顕著で、主要キャラ以外の軍人が写実寄りに描かれている割に、指揮をするオートマタだけが萌え萌えしまくっているので違和感が強く、そこで引いてしまう人は結構多いのではないかと思う。


しかしそこを割り切ってしまうと、本作は意外と面白い立ち位置にあることがわかる。

カフェのお仕事展開や歌によるアイドル展開もあまりない。ヴァイオレット・エヴァーガーデンのように手紙といった別のテーマを掘り下げるわけでもない。リコリコのように裏の仕事として積極的に事件に関わっていくわけでもない。

本作でのキーとなる美少女オートマタは戦争においても直接の戦闘はほとんどしない。この世界のオートマタの仕様上、上位世代は下位世代に対して強制的に命令できる。そして下位世代のほうが量産できる。そのため戦闘を実際に行う下位モデルのための制御装置として利用されている。

だから戦後は下位世代をカフェの仕事という用途で使用して、戦争以外のオートマタの役割を見つけようとする。しかしながらそれでも終わったはずの戦争の影に巻き込まれてしまう。その泣ける展開を楽しむという構造になっている。

正直前半はベタ過ぎて微妙な部分も多い、後半もベタなことでは変わらないのだけれど、前半で仕込んだネタをいかにうまく使って泣かせるかという点がとにかく良くできている。全ては10話以降の展開で泣くための話だと思う。


キャラクターは萌えキャラが好きなら皆とても可愛い。和風カフェ衣装は流行ってるのか。もともとがフィギュア企画ありだったのもあって、すごくフィギュア映えしそうだと思う。

個人的に好きなのはレーツェル。本作では数少ないボケ役、そしてスローループの恋ちゃん感が強い。あとは箒星さん。箒星さんの一番の見せ場は6話の銭湯パート。

主要キャラで唯一の男性であり、オートマタの技術者というハーレムポジションであるナギも、ハーレム物嫌いの自分もあまり嫌にならなかった。カップリングが鴉葉と確定しているのもあるし、11話の独白も非常に良かった。


とにかく全体の構成がしっかりしていて、きちんと1クールで終わるアニメだった。これはこれからも続く原作を切り出したアニメにはできないことだと思う。オリジナルアニメに対する期待にしっかり応えた作品だったと思う。