リコリス・リコイル

前半までは神作品だったのだけれど、後半は投げっぱなし感がある。まずは良かった点から。

3話までの千束がとにかく凄かった。自分は声優さんについてうまいとかいうのがわからないのだけれど、千束の演技については本当に凄いと思った。

3話まではたきながほとんど無感情なのもあり、ほぼ千束の一人芝居と言ってもいいくらいだった。そのなかで台詞の言い方とか調子とかが場面に応じて変わることで、全く一本調子になることなく、それでいてわざとらしくもなく自然に演技できており、声優さんマジ凄いと思った。

1話完結的な話である2話のくるみ救出、4話の水族館デート、そして5話の東京観光とこの辺りが、ギャグも面白いし、千束もたきなも可愛し、シナリオも良くできていると完璧だった。

中盤以降の話で思いがけず良かったのが先生とヨシさんの話。中年おっさんBLにまさかここまで心を動かされようとは。正直百合要素はあまりないので、むしろBLとしてのほうが評価できるのではという気すらする。最後もまあそうなるよねとは思ったけど心に染みる感じだった。


一方で今一つピンと来なかったのが終盤の真島の話である。DAという存在は明らかに異常な組織であり、そこに対して真実を白日にさらしたいという真島の主張自体は理解できる。1000丁の銃や電波塔の使い方も面白かった。

しかしこの真島の主張は11話で明らかになって以降、12話、13話と結局何も進展がないまま終わる。リコリス側もそれに対してリコリスという組織の意義に対する疑問がでてくるかと思えばそういう部分もない。

特に千束はあれだけ人を殺さないことに執着しているにも関わらず、目的のためには人を殺すリコリスに対しては、私は私の主張を貫くが、DAはDAで勝手にやってくれという考えでそこは変わらなかった。


もちろんそこに疑問を差しはさんでしまっては話の根幹が成り立たなくなる。二期も作れなくなるだろう。別にリアリティがどうということを気にしているわけではないのでそれはいい。

しかし例えば似たような美少女エージェント組織であるプリンセス・プリンシパルにおいてはスパイという組織自体についてはシナリオ上問うことはなかった。一方で本作はDAという存在自体を問うことを終盤のメインシナリオに据えた。そうであればもう一歩踏み込んで欲しかった気がする。


もう一点消化不良だったのは、終盤のたきなは千束のピンチ助け役しか与えられなかったこと。もちろんたきなは他のDAと違って千束のために命令を無視するし、これまであまり大きく出さなかった感情を露わにする。これ自体はいい。

ただ自分のようなめんどくさい百合クラスタが求めるのは、そういうレベルではなくてもう一つ上の強い関係性。正直言えばヨシさんとか真島とかどうでもよくて、千束とたきなの関係性にしか興味ないんですよ。

まあ脚本や演出がそこにはあまり興味はなくて、もっと一般受けする方向にしたかったんだろうなあと。