アニメ批評とメディア特性

昨今「アニメ批評」について盛り上がっているようです。

批評と言えるかどうかは別として、作品の評価をブログに書くことがそれなりにある身としては思うところが多いです。

アニメを毎日見るようになったのはここ半年くらいですが、これまで親しんできたゲームや美術とは違ったメディアの楽しみ方もあるように思います。

議論を見ていて思うのは、全然特性の違うメディアの話が意識されていない場合もあり、その辺思う部分をまとめてみました。メディアの種別は以下になります。同人はよくわからんので扱いません。

Twitter

Twitterは批評に値する議論はメディアの特性上成立しないので、そもそもこれを元に批評についての議論をすること自体が間違っていると思います。

Twitterは文字数制限等で「共感」を増幅させることに特化したメディアです。「論理」が成立しないように設計されています。

もちろんTwitterで政治的な話題が扱われることもあるでしょう。しかしこれは以前も書きましたが、現実世界におけるデモ以上の意味はない。問題の提起はできるが、解決のための議論には向いていない。

それを理解して使っている分には、共感そのものが悪いわけでは決してないと思います。

アニメを観るようになっていわゆる「実況まとめサイト」をよく見るようになった。自分は日常系アニメが好きなので、そこに欲しいのは考察ではなくて共感なんですよ。

ブログ

ブログは、インターネット古参民として20年近く見てきましたが、良くも悪くもそんな大きく変わっている気がしないんですがどうなんですかね。

アニメはそこまで観ていなかったですが、映画が以前は好きだったこともあり、はてなブックマークで炎上する映画評なんかもよく見てきました。

あくまで一部のユーザーのはてなブックマークの炎上に比べて、Twitterのほうがはるかに広範囲に使われて、かつメディア特性上の炎上リスクが高そうであることはわかります。Twitterはブログの広告媒体でもあることからなおさらです。

そのためTwitterが普及した2010年代のほうが、2000年代よりもブログの書き手が委縮したという仮説は立てられそうですが、それを検証できるのか。文章解析によるネガポジ分析はできそうですが、明らかなアフィサイトを抜けるかどうかですかね。


実際に起きているかどうかは別として、自分自身は作品について批判も含めた批評が過剰に叩かれて委縮する状況は望ましくないとは思います。

自分も人の文章見て「このレベルのことも知らんのか」と思うこともありますが、そこはお互い様。

最近はアニメについて文章書きますが、にわかな知識で批判しようものなら炎上必至であることは理解はしており、美術について書く時よりはビビって書いているのは確かです。

ただそれでも特に好きな作品についてはその魅力を伝えたい。またゲームや映画はそれなりにお金と時間を費やすわけで、最後までやったなら良い点も批判も含めて書きたいというのはあります。

読むほうでは、アニメでも特に解釈が難しい作品について、全話視聴後に良い解釈や批評をしているブログを探すことは多いです。

自身のもやもやした気持ちを、見事に論理的に説明してくれる文章を読むのはやはり楽しいものです。

商業媒体

正直アニメの商業媒体ははてなブックマーク経由以外では全く読んでいないので、一般論だけです。

映画、美術等の紙の雑誌を定期購読した時期はそれなりに長く、商業誌と批評の一般論はわかっているつもりです。

先にも書いた「解釈や批評」がかつては商業媒体の独断場だったのが、特に他分野の専門家やクリエーターが個人の趣味で書いた文章が個人ブログで読めるようになり、それらの質が高い場合が多いように思います。

それが商業媒体で批評を読む価値の低下につながっている部分はありそうです。

「批評家」という商業的に言えば「この人の作品批評を読むためならお金を払っても良い」というポジションは、別にアニメに限らず今ではどこでも厳しいのではと思っています。


そもそも批評は雑誌、Webニュース、単行本のいずれにもあまり向いていないのではないかと思うのです。

雑誌やWebニュースにとっては、批評はその作品を見た人でしかないとわからないわけで宣伝にはならない。宣伝のためのレビューはまた別の話でしょう。

雑誌においては、批評が公開に対して早すぎたり、遅すぎたりして結局適切な時に読めないことがよくありました。また書籍化されたとしても、よほどのマニアでない限り、知らない作品ばかりの批評で読んでも意味がわからないということになりがちです。

批評を一番読みたいタイミングは「作品を観た直後」なわけです。自分自身がそうですが、そのタイミングで「作品名 レビュー」とかで検索してもアフィサイトや、各話ごとの感想しか入って来ないので、「良い批評」に巡り合っていない可能性は高い。

単なる思いつきですが、今は配信サイトにより「作品を観た直後」がわかる。古い作品を観る機会も多く、その作品に対する批評はニュースと違って今でも価値があるわけです。そこともう少しうまく連携できないのかと思いますね。