川端龍子 vs.高橋龍太郎コレクション

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川端龍子戦争画という文脈が面白かったです。龍子記念館。

川端龍子好きなんですよ。インパクトこそ全ての大画面と時事ネタを含む日本画日本画だからと言ってお高く止まってても時代に取り残されるだけという強い使命感。下世話と言えなくもないけど、やはりある種の改革者だと思うんですよね。

写真の"香炉峰"も正直絵画としては綺麗とかそういう方向ではないんですがコンセプトアート的。何より面白いのはこれが実際に従軍した経験を元に1939年に描かれているガチの戦争画ということだと思います。

"水雷神"のほうが衝撃的で、水神が3体で魚雷を掲げている。今の視点で観ると結構ユーモラスにも見えるし、本展で展示されている山口晃天明屋尚と似た日本古来の絵と現代を組み合わせた文脈に見えなくもない。

でも描かれたのが1944年と太平洋戦争末期なんですよね。従軍経験もあり、三男も戦争で亡くしているとのことで、個人としては戦争に肯定的とは思えない。特攻についても思うところがあったのではと解説されています。

戦争画と言えば通常は戦意高揚的な絵か、戦争の悲惨さを暗に訴えかける絵になります。そのどちらでもでもないというところが川端龍子の面白いところだと思います。もちろん委託された"山本五十六元帥像"とかは普通に描いているわけですが。

終戦直前に自宅が空襲に遭った経験を基にした"爆弾散華"という傑作の話も有名です。戦争が終わって、戦争の悲惨さを直接描ける時代になっても、植物という日本画の古典的なモチーフが四散する絵から間接的にそれを訴える。その辺もやはり只者ではないですよね。