インボイス制度にはインボイスは関係ない

インボイス制度が始まったわけですが、これは免税事業者制度を解体することが財務省の目的であり、本質的にはインボイス(請求書)は関係ありません。

この制度の最も重要な点は、免税事業者の免除された税金は、そこから仕入れを行った業者が代わりに払う必要があることです。インボイスはその支払いのための手段にすぎません。

こうすれば免税事業者が課税事業者に転換すれば免税事業者から、免税事業者のままなら仕入れ業者から消費税が取れるので、実質的に免税事業者制度を解体できます。仕入れ業者は単に負担が増えるのだから嫌がるのは当然です。

インボイスがなくても同じ制度を導入することはできます。インボイス関係なく、免税事業者からの仕入れ額の一律10%を消費税として仕入れ業者が支払い消費税から控除してきた枠を廃止するだけです。これならインボイスは全く関係なく免税事業者制度の解体という目的を達成できます。

不思議なのは、インボイス制度に反対する側も、賛成する側もこの点を直接指摘している意見を見なかったことです。免税事業者制度というのは基本的には小規模事業者の保護のための税優遇制度です。これは起業や副業を支援するという文脈からは守られるべき制度と言えます。

反対する側は自分が困るという点だけでなく、社会的に起業や副業を支援する文脈から問題があることを指摘すべきでした。政府も昨今はフリーランスの保護とか言っているくらいなので、そことの矛盾を指摘すべきでした。

経済学者はほとんどがインボイス制度に賛成でしたが、普段日本に起業家が少ないとかどの口で言っているのでしょうか。税の公平性というなら、NISAや企業の各種税優遇は税の公平性に反しないのでしょうか。

インボイス制度にとってインボイスは本質をわかりにくくするための隠れ蓑でしかありません。うまく財務省にだまされたというのが正直な感想です。