魔法少女育成計画

まどマギ以上の鬱魔法少女アニメ。でも最後は嫌いじゃない。

本作は単純に言えば異能力バトルロイヤルである。しかし爽快感のようなものが全くない。バトルシーンがカッコよくないわけでも、異能力設定が生かされていないというわけでもない。むしろそこは非常に良くできている。

そもそもバトルというのは殺し合いである。それに対して爽快感を感じるほうが異常である。本作の凄いのはバトルに対する爽快感を徹底的に排除し、その残酷さだけを感じることができることだと思う。

本作の目的は表向きは「良いことをしてマジカルキャンディを集めた魔法少女」を選抜することになっている。キャンディの最も少ない魔法少女は脱落する。脱落とは死である。本作における死は絶対であり、生き返ることはない。

しかし「1週間の間に誰か一人以上が死ねばよい」というルールがバレてしまうと、直接相手を殺したほうが確実であるということに全員が気が付いてしまう。ファブ自体は一言も「皆さんに殺し合いをしてもらいます」とは言っていない。それにかかわらず、自主的に殺し合いが始まってしまう。

もちろん殺し合いを望まない魔法少女も何人もいて、結束しようという意思も見せるのだが、結果としてはその時点で殺されてしまったりして大勢を動かすことはできない。また毎週1人は確実に死ぬというルールも変えることができない。

また派手なバトルはある一方でそれとは関係なく、暗殺のような形で殺されることが多いのも特徴だろう。死はあっさり訪れるのに、魔法少女になるきっかけの現実世界の回想は非常に丁寧である。しかしその過去は誰にも知られることがない。ただそういう現実の人物が理不尽に死ぬ。それだけである。

主人公であるスノーホワイトは、正しいことをして人助けをするという本来の魔法少女としては優秀である一方で、殺し合いという点では全く無力である。他のキャラに守られることで生き延びることができるが、守った側は次々と殺されて、それに対して何もすることができない。

だからこそあの最後は意味があった。本作の終わらせ方としては完璧だったと思う。一応ハッピーエンドではあるし。


表向きは何か崇高な目的のために切磋琢磨しているように見せかけて、実際は優秀な人物を選抜するための殺し合いをするように仕組まれていることは、現実においても意外とあるのではないだろうか。

逆に崇高な目的のために努力してもらいたいと本当に思って評価システムを作成したにも関わらず、結果としては足の引っ張り合いを産むだけになっていることもありうる。適度に競争を産む評価システムというのは難しい。